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木工着色塗料の選び方 その③~木材による仕上がりの違い~

木工着色塗料には、豊富な選択肢があります。本記事では、光源や面積など、色を評価する際の条件について、塗装見本の写真を交えつつ、木工塗料専門メーカーが詳しく解説します。

木工着色塗料を選んだ際、完成した塗装品を見て「思っていたイメージと違った」という経験はありませんか?
同じ色で塗装しても、基材となる木材の樹種や加工、処理の種類によって仕上がりが異なる場合があります。
本記事では、木工着色塗料を選ぶ際、木材についてどのようなポイントに留意すべきなのか、塗装見本の写真を交えて解説します。

公共施設や商業施設の建築設計などで、木工着色塗料を選定する立場にあるが、相談できる人が周りにいない、とお困りの方はぜひ参考にしていただければ幸いです。

樹種別の仕上がりの違い

「木材」と一口に言っても、樹種が違えば生物としての種類が異なりますので、その性質は様々なバリエーションがあります。
塗装という観点から見ても、癖がなく塗りやすい樹種もあれば、塗装には不向きとされる樹種もあります。
以下では住宅内外の木部で、比較的見る機会が多い樹種を例に挙げつつ解説します。

色が着きづらい(浸透型塗料が吸い込みづらい)樹種

ヒノキ

強度が高く耐久性に優れる性質、美しい木目をもちます。
建築物の構造材や天井壁などの内装材、浴室などに用いられます。
同じく国産材としてよく使用される杉と比べると、密度が高く、硬い樹種です。また、耐朽効果のある樹脂成分を多く含みます。
これにより、塗料の吸い込み量が比較的少なくなり、色づきが薄くなる場合があります。

米松

強度が高く、耐久性に優れる性質をもちます。
建築物の構造材や棚などの造作材、外装材としても用いられます。
樹脂成分の含有量が多い樹種で、ヒノキの倍近い樹脂成分を含むとする文献もあります。
製材加工過程で適切に処理されていれば問題ありませんが、処理が不十分で樹脂分が多く残っている場合、着色塗装すると色づきが薄くなったり、色はじきを起こす場合があります。

南洋材

住宅の木工塗装分野においては、イペ、ウリン、セランガンバツなど、東南アジアの熱帯地方で生産される木材を指します。
一般に重く硬く、虫やカビに強い材質で、「鉄木」と呼ばれることもあります。
その特性を活かして、ウッドデッキに用いられることが多いです。
ほとんど塗料の吸い込みが無く、塗装したとしても簡単に脱落してしまうため、基本的に塗装は行わない場合が多いです。

軽量で強靭な性質を持ちます。
和風住宅における壁などの内装材や、垣根などの外構材として用いられることがあります。
外皮部分が非常に滑らかで、吸水率が低い性質を持ちます。さらに、含有する樹脂成分の影響もあり、塗料が密着せず、吸い込みづらい樹種です。
基本的に塗装は行わない場合が多いです。

色ムラができやすい樹種

シナ

美しい木目と虫害への強さを持ちます。
主に天井や壁などの内装材として用いられます。
夏目と冬目(早材と晩材)の塗料の吸い込みの差が大きく、着色塗装をした場合、色ムラになることがあります。

ブナ

強度が高く加工性に優れる性質をもちます。
内装の床やカウンターなどの造作材として用いられます。
板目(後述)について、塗料の吸い込みムラが激しく、色ムラを引き起こしやすいです。
且つ、色ムラを起こした場合、汚く見える傾向があります。

同じ樹種でも着色に影響を及ぼすケース

木は生物ですので、同じ樹種であっても異なる性質をもつことがあります。
以下では着色塗装において影響を及ぼすケースを紹介します。

赤太と白太(芯材と辺材)

主に針葉樹材の年輪部分の違いを表す用語です。
赤太(芯材)は樹幹の中心部分の年輪部分で、色が濃く、赤みや黄色みを帯びています。
白太(辺材)はその逆で、色が薄く、白っぽい色合いをしています。
特に杉は色の差が大きく、着色塗装をした場合、下地の色の差が透けて、色ムラとして表れることがあります。

柾目と板目

丸太から板を切り出すときの、切り出し方の違いによる分類です。
塗装の観点からみると、柾目の方がクセは少なく、板目は研磨ムラや吸い込みムラが出やすい傾向にあります。

夏目と冬目(早材と晩材)

木材の成長時期の違いによって生じる木目の違いのことです。
夏目(早材)は春から夏に成長した部分で、密度が低く、軟らかい特徴があります。
冬目(晩材)は夏から秋に成長した部分で、密度が高く、硬い特徴があります。
塗装の観点からみると、冬目は塗料が吸い込みづらく、比較的色が着きづらい部分と言えます。

木材の産地

同じ種類の木でも、気候や土壌などの違いにより、産地で性質が異なる場合があります。
例えば、九州産の杉(オビスギ)は 淡いクリーム色から淡いピンク色までの範囲で、比較的明るい色合いが特徴ですが、東北産の杉(秋田杉)は 淡いクリーム色から淡い褐色までの範囲で、比較的暗い色合いが特徴です。

加工別の仕上がりの違い

木材は丸太から切り出したそのままでも優れた建材ですが、さらに加工を行うことで、用途を広げたり、品質を一定にそろえたり、廃棄量を減らしたりすることができます。
一方、着色塗装を行う上では、注意すべき加工種もあります。
以下では住宅内外の木部で、比較的見る機会が多い加工種を例に挙げつつ解説します。

着色塗装する上で留意すべき加工材

1本の丸太から切り出され、加工されていない、自然のままの木材のことを「無垢材」と呼びます。
一方で、いわゆる「ベニヤ板」など、人工的な加工を施した木材のことを「加工材」と呼びます。
塗装の観点からみると、無垢材は木材の特性がそのまま表れる一方で、加工材は加工の種類によって塗装に影響を及ぼす場合があります。

集成材

断面寸法の小さい木材(板材)を接着剤で再構成して作られる加工材です。
建築物の構造材の他、カウンター天板や階段部材などにも用いられます。
木材ピースごとの色ムラが大きいと、着色塗装しても色がばらついた仕上がりになることがあります。

パーティクルボード、OSB、MDF

木片または繊維化した木材を積層して、熱と接着剤で板状に成形した加工材です。
木片の大きさや積層させる方向などで分類・名称が異なります。
基本的には床や壁、棚などの什器の下地材として用いられますが、OSBについては近年、独特な意匠性を活かして内装壁などに用いられることもあります。
製品により、塗料の吸い込みの程度が著しく異なる場合があり、研磨して表層の接着剤層を除去しないと塗料が吸い込まない(浸透型の着色塗装ができない)ものもあります。
またいずれの材も共通して、木口面は天面と比べて塗料の吸い込みが非常に多く、着色時の色差を引き起こしやすいです。
※写真はOSBです。

集成材、OSBを含めた、接着処理を伴う加工材全般

製品によっては、接着剤が表面に染み出して色づきに影響する場合があります。
浸透型着色塗料は、接着剤には浸透せず、色が着かないためです。
トラブルの具体例としては、「導管の部分に色がつかない」「接着剤の跡が形として浮き出る」などが挙げられます。

処理木材について

※全般として、製品によっては専用塗料が指定されていたり、塗装自体が不向きなものもあります。
不安な場合は木材メーカーに問い合わせされることをお勧めいたします。

薬品処理木材

木材の耐久性や防腐・防虫効果を高めるために、様々な薬品を使って処理された木材です。
建築物の構造材やウッドデッキ、フェンスなどに用いられます。
製品によっては、処理によって本来の木材の色から変化していたり、薬剤が含侵している分塗料の吸い込み量が少ないものもあります。
そのような木材に着色塗装を行った場合、下地の色が影響したり、色が薄くしか着かないなど、望んだ色味に仕上がらない場合があります。

加熱・加圧処理木材

木材の耐久性と寸法安定性を高めるために、高温と高圧の条件下で処理された木材です。
建築物の外壁やウッドデッキ、フェンスなどに用いられます。
薬品処理木材とは違い、化学物質を使わずに木材自体の性質を改善できることが特徴です。
製品によっては、処理によって本来の木材の色から変化していたり、木材の密度が向上する分塗料の吸い込み量が少ないものもあります。
そのような木材に着色塗装を行った場合、下地の色が影響したり、色が薄くしか着かないなど、望んだ色味に仕上がらない場合があります。

焼杉

杉の丸太や板材を高温で焼いた木材です。
防虫防腐効果を有し、外構材(フェンス、デッキ、垣根など)や内装材(壁板、天井材など)に用いられます。
焼いたままのタイプと、焼いた後に「浮造り処理(焦げた部分を機械的に削り取る)」を行うタイプがあります。
いずれのタイプも、性状としては無垢材ですので塗装は可能ですが、木材の色が黒~褐色であるため、着色塗装を行った場合、下地の色の透けが目立ちやすいです。

不燃木材

木材に薬剤を含浸させたり、特殊な処理を施すことで、可燃性を低下させた木材です。
一定の耐火性能が求められる建築物の内外装材などに用いられます。
製品によっては「白華現象(木材の表面に白い粉状の物質が析出する現象)」が発生することがあり、木材の色とのコントラストが大きいほど目立ちやすくなります。
また、薬剤が含侵している分、塗料も浸透しづらく、色が薄くしか着かない場合もあります。
※不燃木材への塗装は注意点が多数ありますので、今後単独コラムにて詳しくご説明を予定しております。既にご検討されている場合は、弊社までご相談下さい

トラブルを回避する塗料選定テクニック

理論的には、塗装に適した種類の木材を選定し、且つ全く同じ性状の木材で揃えることができれば、木材要因の着色トラブルはほとんど発生しません。
しかし今回ご紹介した通り、木材は樹種・加工種ごとに特徴があり、同じ樹種同士であっても性状が異なる場合がありますので、現実的には難しいところです。
この章では、木材要因で色のばらつきや色着きの違いが懸念される場合に、それらを和らげる塗料選定テクニックの例をご紹介します。

濃色タイプの塗料を用いる

ヒノキなど塗料の吸い込みが少ないことで色が着きづらい樹種や、赤太と白太など下地の色のバラつきが大きい木材を塗装する場合、色の濃度が高い塗料を選定することで色差を和らげることができます。
弊社塗料例:VATON-FXウッドプロ (塗料サンプル等のご請求はこちら

下地の色に近い色を選定する

例えば緑色がかった防腐処理木材を塗装する場合、ダーク系の着色(ダークブラウンやブラック)等、緑が影響しづらい色を選定することで、色の変化を和らげることができます。
使いたい塗料のカラーバリエーションに希望するものが無い場合、「調色」してオーダーメイドの色をつくる選択肢もあります。(調色のご相談はこちら

漂白処理を行ってから塗装する

赤太と白太など基材の色味が異なる場合、漂白薬剤で処理することによって、下地の色差(ひいては塗装時の着色差)を和らげることができます。
ただし、適切に施工しないと木材を痛めたり、その後の塗装不良が発生するリスクがあるため、注意が必要です。

ダーク系の色調での塗装は避ける、透明色の塗料で下塗りを行う

シナなど、塗料の吸い込みムラによる色ムラが懸念される樹種の場合、ダーク系の着色を行うと色ムラが目立ちやすいため、使用を避けることで色ムラを和らげることができます。
他には、着色前に透明色を下塗りしたり、刷毛塗りではなくスプレー塗りを行うなどで、吸い込み量の差(ひいては塗装時の色着きの差)を和らげる対策もあります。

塗りつぶし仕上げにする

今回ご紹介した内容は、木目(下地)を透かした塗装を行う場合のお話となります。
ペンキ仕上げのように、下地を塗りつぶす場合、木材要因による着色への影響はほとんどありません。
ただし塗りつぶしの場合、当然ながら木目も隠ぺいされてしまいます。
下地の影響は軽減したいが、木目もある程度見えるようにしたい、という場合は、塗りつぶし(造膜型塗料)と浸透型の中間にあたる「半造膜型塗料」を採用することも対策の一つです。
弊社塗料例:ソワードステイン (塗料サンプル等のご請求はこちら

まとめ

本記事では木工着色塗料を選ぶ際、木材についてどのようなポイントに留意すべきなのか解説しました。

木工着色塗料を選ぶ際には、樹種や加工、処理の種類についても注意を払うことで、トラブルのリスクを軽減することができます。
今回紹介した要素が着色塗装に及ぼす影響を理解し、場面に応じた塗料を選定することで、読者の皆様がより良い仕上がりを実現できることを願っています。

とはいえ、樹種や加工、処理の種類も膨大な種類がありますので、今回ご紹介できた情報は全体のほんの一部です。
調べたい基材について情報が載っていない、または、掲載されている情報についてもっと詳しく質問したい、という方は、お問合せフォームより、お気軽にお申し付けください。