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【徹底解説】木工着色塗料の選び方 その⑤木材保護塗料の3タイプ~浸透型、造膜型、半造膜型塗料~
木工着色塗料(以下、着色剤と記載)を使用した時に、完成した塗装品を見て「思っていたイメージと違った」という経験はありませんか?
前回のコラムでは、研磨番手や塗布量による仕上がりの違いについて解説しました。
今回は、屋外塗装に用いられる「木材保護塗料」の内、浸透型、造膜型、半造膜の3つのタイプによる色の見え方の違いについて、写真や図を交えて解説します。
目次
木材保護塗料とは
「建物の中に使うものか、建物の外に使うものか」で使われる着色剤の種類は変わります。
ウッドデッキやベンチなど、建物の外の塗装における着色剤は主に「木材保護塗料」が使われます。
国交省の「JASS 18 建築工事標準仕様書」では、『木材保護塗料とは、樹脂(アルキッド樹脂やあまに油等)および着色顔料のほかに、防腐、防カビ、防虫効果を有する薬剤を含むことを特徴とする既調合の半透明塗料。』と定義されています。
もう少しかみ砕くと、モルタルやサイディングボード、木部など様々なものに塗装できる、いわゆる「汎用塗料」と比べると、「木材保護塗料」には大きく2つの特徴があると言えます。
特徴①保護機能
防カビ、防腐、防虫などの保護機能を持つ塗料が多いです。
屋外の木部は雨、カビ、虫等の影響を受けて劣化しやすく、それらから木材を保護する必要があるからです。
特徴②柔軟性、通気性
木材の変形に追従する柔軟性や、木材の呼吸を妨げない通気性などの特性を有するものが多いです。
屋外の木部は水分、湿気の出し入れが多いため、柔軟性や通気性が乏しい塗料を使用した場合、木材の変形に追従できずに塗膜がはがれてしまったり、塗膜と木材の間に水が溜まって塗膜が浮き上がったり(「フクレ」とも言います)するリスクが高まります。
木材保護塗料の3つのタイプ
「木材保護塗料」と一口に言っても、「浸透型、半造膜型、造膜型」の3つのタイプに分かれており、目的や用途に応じて使い分けが必要です。以下ではそれぞれのタイプについて、メリット・デメリットを説明します。
浸透型木材保護塗料
浸透して木材を着色、保護するタイプです。
メリット:木目を強調した仕上がりになる。経年劣化しても造膜型のように塗膜の剥離が生じない。
木材の表情を楽しむことができるので、木目を活かしたい新築の建物の塗装は、ほとんどの場合浸透型が選定されます。
デメリット:下地を隠ぺいする力が低い。他のタイプに比べ耐候性は低い。
木材の色よりも大幅に明るい色を塗装したり、下地の劣化・変色が大きい木材を塗り替えるような場合には、希望する仕上がりにならない場合もあります。
※写真は 浸透型 木材保護塗料(水性バトンプラス) パイン色 2回塗り
造膜型木材保護塗料
ペンキのように表面に膜を造り(造膜)着色するタイプです。
メリット:下地を隠ぺいする力が高い。他のタイプに比べ耐候性も高い。
下地の色に左右されづらく、たいていの場合は希望の色に仕上げることができるため、下地の劣化・変色が大きい塗り替え案件での採用が多いです。また、色がはっきりして均一な印象も与えられるため、北欧風のデザインに向いていると言えます。
デメリット:木目を塗りつぶしてしまう。塗膜劣化による弊害。
良くも悪くもペンキ調になってしまうため、木目を活かしたい案件には不向きです。また、造膜型塗装の上から塗り替えを行う場合、劣化した塗膜を除去するのに大きな労力がかかるため、補修が容易にできないことにも注意が必要です。塗膜が劣化し剥がれた場合、美観への影響も大きいです。
※写真は 造膜型 木材保護塗料 パイン系統色 2回塗り
半造膜型木材保護塗料
木材の表面に薄い膜を造り着色するタイプです。2010年前後から木材保護塗料市場に登場した、比較的新しい概念です。
メリット:木目をある程度残しつつ、下地を隠ぺいすることができる。
浸透型は下地の汚れなどが透けてしまいがち、かといって造膜型は隠ぺい力高い分、木目も塗りつぶしてしまう、と悩むことが多い初期~中期の塗り替えで多く採用されます。
デメリット:造膜型ほどの隠ぺい力は無い。
隠ぺい力が高いと言っても、造膜型ほどではないので、黒くなった下地を真っ白に着色するのは難しく、かといって色が着くまで塗りすぎると造膜型と同じような、木目が消えた仕上がりになってしまう点には注意が必要です。
※写真は 半造膜型 木材保護塗料(ソワードステイン) パイン色 2回塗り
塗料の選び方
選ぶポイントは大きく2つあります。「仕上がり」と「耐候性」です。
仕上がり
一般的に浸透型>半造膜型>造膜型、の順に木目が強調された仕上がりになります。劣化材に塗装する場合(≒塗り替えの場合)、明るい色に塗り替えるのか、暗い色に塗り替えるのかで塗料の選び方が変わります。下の写真は杉の新材、劣化材にそれぞれのタイプの木材保護塗料を塗り比べたものです。
木目の現れ方に違いがありますが、発色にはあまり差が見られません。次に、劣化材への塗装を見てみましょう。
浸透型の明るい色は、くすんだ色に仕上がってしまいました。一方で、暗い色については、あまり差が見られません。何故、このような結果になるのでしょうか。
写真のように、木材は劣化すると灰色に変化していき、液体の吸い込みも多くなります。浸透型塗料は下地の色が透けやすく、吸い込みが多い下地では色づきも悪くなります。また、明るい色は、下地の影響を受けやすいです。つまり、劣化の激しい材料に浸透型の木材保護塗料を塗装した場合、パイン色等の明るい色調では、新材に比べ綺麗に発色する事が難しくなるのです。これらの事情から、木材の劣化が大きい塗り替え案件で明るい色調を塗装する場合は、造膜型や半造膜型が選定されることが多いです。
耐候性
一般的に造膜型>半造膜型>浸透型の順に耐候性は高くなります。木工塗装の耐候性は製品や環境、その他塗装条件によっても大きく結果が変わるため、明確に定めることは難しいです。あくまで一般論としては、新規面の塗装でメンテナンスが必要になるまでの期間は、浸透型で2~3年、半造膜型で3~5年、造膜型で5~7年、などと言われることが多いです。容易に塗り替えを行えないような高所、広面積の場所であれば、塗り替えるまでに長期間塗面を保持する必要がある為、半造膜型、造膜型の木材保護塗料が選ばれることが多いです。
ただし、造膜型塗料の場合、劣化して下地から浮き上がっている塗膜は、除去してから塗装しないと塗装不良につながるリスクが高いため、剥離作業のコストがかかることも頭に入れておく必要があります。ウッドデッキなど、摩耗により塗膜がはがれやすく、こまめに塗り替えが出来る部位であれば、浸透型塗料や半造膜型塗料が選定されることが多いです。
★劣化材でも明るい色で木目を強調した仕上がりにしたい場合
塗り替え(劣化材への塗装)において、浸透型塗装で明るい色に仕上げたい場合や、旧塗膜が劣化している場合は、剥離作業が必要になります。剝離作業は、専用薬剤の塗布~水洗浄(場合によっては+スクレーパー等での表面そぎ落とし)で行われることが一般的です。薬剤は劇物に該当する製品も多く、人体や木材を痛めるリスクもあるため、取り扱いには十分な知識・技能が必要です。
その他、乾式ブラストという方法で旧塗膜を除去する選択肢もあります。専用機械が必要になりますが、薬剤も水も使用しないため、人体や木材に対するリスクがほとんどありません。それだけでなく、表面が耕されて塗布量が増加することで、通常の塗装と比べて耐候性を大幅に向上させることも出来ます。弊社では、ブラストと専用塗料を組み合わせた工法としてご提案しておりますので、ご興味のある方はこちらのページをご覧ください。
まとめ
本記事では屋外に使う木材保護塗料の種類と選び方を紹介しました。ケースに適した塗料を選定することで、イメージ通りの仕上がりを得やすくなり、案件の満足度を高めることができます。今回紹介した内容から、読者の皆様がより良い仕上がりを実現できることを願っています。
とはいえ、今回ご紹介できた情報は全体のほんの一部です。調べたい塗料について情報が載っていない、または、掲載されている情報についてもっと詳しく質問したい、という方は、以下のフォームより、お気軽にお申し付けください。
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この記事を書いた人:販売促進グループ 増田
画力と丁寧な記述に定評のあるライター。業務ではWEB販促を担当。最近は人生6度目のダイエットに挑戦中。