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【徹底解説】木工着色塗料の選び方 その⑥顔料と染料
木工着色塗料(以下、着色剤と記載)を使用した時に、完成した塗装品を見て「思っていたイメージと違った」という経験はありませんか?
今回は、顔料と染料による色の見え方の違いについて、写真や図を交えて解説します。
目次
「顔料系着色剤」「染料系着色剤」の概要
着色剤の分類の仕方は様々ありますが、原料目線の区分けとして「顔料系着色剤」「染料系着色剤」という二つに分類することができます。
大雑把に言えば、以下のような違いがあります。
顔料系着色剤:色(粒子)が混ざっている。希釈しても濁っている。
染料系着色剤:色が溶けている。希釈すると透き通っている。
この特性によって、塗装した時の仕上がりに違いが出てきます。以下で各項目について説明します。
「顔料系着色剤」「染料系着色剤」の違い
透明性の違い
顔料系着色剤は透明性が低く、染料系着色剤は透明性が高いです。
写真でも、染料系着色剤の方は瓶の底が透けて見えていることから、透明性の高さが分かります。
これにより、塗装した際の木目の鮮明さに差が出ます。
色調の違い
顔料系着色剤は濃度を濃くした場合、色目は変わらず隠ぺい性が高くなります。
一方で染料系着色剤は濃度を濃くした場合、色目が黒くなります。
どちらを使う場合でも、濃度が規定値よりもぶれてしまうと、望んだ仕上がりにはならない点に注意が必要です。
滲み(にじみ)の違い
染料系着色剤は着色後に溶剤系の塗料を上塗りした際、希釈シンナーの影響で滲みが発生しやすいです。
例えば筆者の経験として、スピーカーBOXなどの立面塗装時、染料系着色後に溶剤系中塗りを塗装すると、導管の部分から色が溶け出して色ムラ・垂れ跡になってしまったことがあります。
※マニアックな余談ですが、スプレーガン塗装であれば対策が可能です。着色後上塗りする際に、最初はドライ気味に吹き付けて、上乾きが来るか来ないかのタイミングでウェットに重ね塗りすると、滲みリスクを軽減できます。弊社ではこのような塗装の指導も実績がございますので、ご希望される方がいらっしゃれば、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
色ムラの違い
木地着色時、顔料系着色剤は木地の吸い込みによる色ムラが少ないです。(0ではありません)一方、染料系着色剤は、木地の吸い込みによる色ムラが激しいです。写真のように、シナ材などの色ムラが発生しやすい木材を塗装する際には、特に注意が必要です。
材色のバラつきが大きい集成材などを塗装する際は、材色をそろえる目的で、顔料系着色剤が使われることが多いです。
※木材種類が着色に及ぼす影響については「木工着色塗料の選び方 その③~木材による仕上がりの違い~」こちらのコラムで解説していますので、確認してみてください。
日光による退色の違い
退色とは「色がさめること。褪(あ)せること」です。
顔料系着色剤は染料系着色剤に比べると日光によって退色しづらいものが多いです(例外もあります)
以下の写真は、それぞれの塗面にシールを貼り、日光を一定時間照射した試験です。顔料系着色剤の方はほとんど変わりありませんが、染料系着色剤の方はシールの部分(日光が防がれている部分)以外は、大きく退色してしまっています。
このことから、染料顔料の選定は塗装場所(日光の当たり具合)も考慮に入れる必要があるといえます。
使い分けの例
ゴム材など木地着色のムラが出やすい木材を使用した製品(階段部材や収納棚 等)
木地着色、カラーイング(補色)共に顔料系着色剤を使用する場合が多いです。
ゴム材などは、着色すると導管が汚れて見えやすい特徴があり、染料系着色剤を使用した場合、色ムラが顕著に出てしまうためです。
また、このような樹種を採用する製品は、集成材が用いられる場合が多く、材色のバラつきを抑える意味でも、顔料系着色剤が使われることが多い、という訳です。
ウォルナットなど銘木を使用した製品(テーブルや椅子 等)
従来は、木質感を活かす目的で木地着色、カラーイング共に染料を使うことが多く見受けられました。
しかし、近年では銘木といえど、材色のバラつきが多いため、材色揃えの意味合いから木地着色は顔料系着色剤、カラーイングは染料系着色剤、といった組み合わせが増えています。
新しいタイプの着色剤
様々お話ししましたが、実は、木工塗料市場としてみると、染料系着色剤のシェアは低下しています。理由としては以下などが挙げられます。
・消費者嗜好の変化や木製品メーカーの品質基準の変化により、透明感・木質感ニーズ自体が少なくなってきた。
・銘木の品質が低下して、材色のバラつきが多くなってきた
実際、多くの家具メーカーで、染料系着色剤から顔料系着色剤への切り替わりが進んでいます。しかしながら、そうなると当然、従来のような透明感のある仕上がりを維持することは難しくなってしまいます。
そこで近年では、染料系着色剤のデメリットを補った、「透明性の高い顔料系着色剤」が開発されています。
このタイプは、顔料の粒子を小さくすることで、高い透明性を実現しています。あくまでも顔料系着色剤なので、染料系着色剤と比べると日光で退色しづらく、材色揃えにも効果を発揮します。
写真は弊社の染料風顔料系着色剤「ルシッドステイン」と、一般的な顔料系着色剤との比較ですが、木目の見え方から、明確に透明性が高いことが分かります。
一方でデメリットとして、一般的な顔料系着色剤と比べると、粒子のサイズが小さくなり、隠ぺい性が下がるため、着色力が下がることには注意が必要です。
※カメラ・ディスプレイモニター設定により見え方は変わります。
まとめ
本記事では顔料と染料による色の見え方の違いについて紹介しました。
ケースに適した塗料を選定することで、イメージ通りの仕上がりを得やすくなり、案件の満足度を高めることができます。
今回紹介した内容から、読者の皆様がより良い仕上がりを実現できることを願っています。
とはいえ、今回ご紹介できた情報は全体のほんの一部です。調べたい塗料について情報が載っていない、または、掲載されている情報についてもっと詳しく質問したい、という方は、以下のフォームより、お気軽にお申し付けください。
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この記事を書いた人:販売促進グループ 増田
画力と丁寧な記述に定評のあるライター。業務ではWEB販促を担当。最近は人生6度目のダイエットに挑戦中。