事例・コラム
Column
硬度が高くて傷に強い塗料が欲しい!

この記事をお読みのあなたは、お客様から以下のような質問をされたり、あるいは自分自身が質問したりしたことはありませんか?
「鉛筆硬度9Hに該当する塗料はありませんか?」
「木を硬くして傷がつかないような塗料を塗りたいのですが…」
まず結論として、弊社から「鉛筆硬度9Hの塗料」をご提案することはできません。
しかし、「杉やヒノキといった柔らかい木材を、学童机の天板に採用されるレベルまで耐傷性を向上させる塗料」をご提案することは可能です。

これを説明するためには、「硬度」と「傷」について、少し詳しくお話しする必要があります。
長く小難しい話になりますので、結論だけ教えて!という方は「では結局、「硬度が高くて傷に強い木工塗料」を選ぶにあたっては、どう考えればいいか?」まで読み飛ばしてください。
目次
木工塗装でよく話題に挙がる「傷」とは
あなたは、「傷が入りにくい塗装」と想像した時、どんなシチュエーション、どんな傷を思い浮かべますか?
弊社の場合、傷についてのお問い合わせをいただくことが多いのは、テーブルやカウンターの天板の塗装です。
それらテーブルやカウンターの「傷」というと、以下の2つがよく話題に挙がります。
①擦り傷・引っかき傷
軽い力で表面を擦った時につく傷です。
食器を引きずった時や、筆記用具が擦れた時の傷が該当します。
塗装下地までは到達していない浅い傷であることが多いですが、寄り集まることによって、表面が白っぽく・艶が消えたような見た目になることがあります。

②打ち傷・凹み傷
強い力で表面を打った時につく傷です。
食器を置いた時や、椅子がぶつかった時などにつく傷が該当します。
塗装下地まで到達する深い傷になることが多く、そこから水が浸入するなどすると、塗膜の割れや剥がれを引き起こす原因になります。

「鉛筆硬度9H」って結局何?~耐傷性を確認するための試験~
・耐引っかき傷試験(引っかき硬度試験(鉛筆法))
塗膜の硬さを表す指標として、「鉛筆硬度●H」という文言がよく使われますが、これはこの試験の結果をシンプルに表したものです。
この試験はその名の通り「塗面に鉛筆でひっかき傷をつける」というものです。

※フリーハンドでの試験も認められていますが、弊社では基本的に、このような試験機器を使って、誰が試験しても同じ力で傷をつけられるようにします。
参考:日本塗料検査協会「引っかき硬度(鉛筆法)」https://www.jpia.or.jp/test/items/enpitsuhou.html
例えば
鉛筆硬度Hまでは傷がつかなかったが、2Hからは傷がついた、ということであれば、「鉛筆硬度H」
9Hで傷がつかなかったなら、「鉛筆硬度9H」と表現されます。
・耐打ち傷試験(耐おもり落下性試験)
上記の鉛筆試験で評価したのは表面の強度=「硬度」でしたが、 一方で衝撃に対する強度のことを「靭性(じんせい)」といいます。
硬度は硬さを指しますが、靭性は粘り強さを指します。
ガラスやダイヤモンドなど、硬度が高いものを想像してもらえると分かりやすいですが、一般的に、硬度(硬さ)と靭性(粘り強さ)は反比例する関係にあります。
この靭性を評価するのがこちらの試験です。
簡単に言えば、金属製の重りを塗面に落下させて、塗膜の傷のつき具合(衝撃により変形する時の割れ・剥がれ)を見る試験です。

試験の内容は「重りを持ち上げる高さ」「重りの接地面積」「重りの重さ」で表されます。
例えば「50㎝×1/2インチ×300g :異常なし」という具合です。
「塗膜単体」と「軟質材+塗膜」での耐傷性の違い
小難しい話が続いてすみません。あと一息です。
先ほど紹介したそれぞれの耐傷試験ですが、これらは基本的に「塗膜単体」に対して試験を行います。
具体的には、ベークライト板やガラス板、金属板など、頑丈で試験内容に対して影響を受けない素材に塗装したものに対して試験を行います。
一方で、木工塗装の下地になる木材には、杉やヒノキなど、それらの下地よりも格段に柔らかい素材も多く使われます。
何が言いたいか?身近なもので例えてみます。
スマートフォンの画面保護用のガラスフィルム(鉛筆硬度9H表示で、コピー用紙くらいの厚みのもの)があったとして
それを
・スマートフォンの画面に貼る場合
・台所のスポンジに貼る場合
それぞれ想像してみてください。
次は、それに硬度Hの鉛筆で傷をつけてみることを想像してみてください。
軽く表面を擦るだけなら、どちらの場合でもあまり傷はつかないでしょう。
しかし、文字を書くぐらいの力でひっかいてみるとどうでしょう?
スポンジに貼った方(下地が柔らかい方)は、凹みやひびが入ったり、最悪割れてしまう画が頭に浮かびませんか?
鉛筆硬度は9Hのはずなのに、おかしいですよね?
これは極端な例でしたが、下地が柔らかく、塗膜の厚みが薄い木材の塗装において、塗膜単体の試験性能がそのまま発揮されるか?というと、必ずしもそうではないというお話です。
具体例として、塗膜単体の鉛筆硬度がH~2Hの塗料であっても、杉材へ塗装して同じ試験をすると、結果は4Bだった、というケースも実際にありました。
では結局、「硬度が高くて傷に強い木工塗料」を選ぶにあたっては、どう考えればいいか?
筆者は以下の2点を確認して提案するようにしています。
①「傷」がどんな傷を指しているのか確認
②下地になる木材の種類を確認
経験上、以下のようなシチュエーションが多いです。
①「傷」がどんな傷を指しているのか確認
➡カウンター・テーブル天板用途であり、うち傷・凹み傷も想定する必要あり。
②下地になる木材の種類を確認
➡杉やヒノキなど、やわらかい木材(だから、塗装で傷をカバーしたい)
この条件でお勧めする弊社塗料は
「セーフティーワルツ(以後SWと記載) スーパープロテクトシステム」です。
独自の組成により、木材の保護に最適な硬度・靭性を兼ね備えた塗料です。
「塗膜単体」ではなく、「杉やヒノキなどの柔らかい木材」が下地の条件で、以下の試験結果となっております。
・引っかき硬度試験(鉛筆法)※凹みにて評価
SWスーパープロテクトシステム:3H
一般的なウレタン塗装:4B
無塗装の杉材:6B
↓参考動画です

・耐おもり落下性試験(30cm×1/2インチ×500g)
以下の写真の通り(杉材の早材・晩材箇所をそれぞれ試験)

・採用事例
杉材を活用した小学校の学童机天板へ継続してご使用いただいております。

いかがでしたでしょうか。
塗装品の傷については、納品後に時間差でトラブルになることもある、難しいテーマです。
一方で、適切に対策・提案できるなら、自社独自の強みとして大きな差別点にもなります。
ぜひ、
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この記事を書いた人:販売促進グループ 増田
画力と丁寧な記述に定評のあるライター。業務ではWEB販促を担当。最近は人生7度目のダイエットに挑戦中。