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木工着色塗料の選び方 その①~木工塗料の役割・特徴・種類~

木工着色塗料には、豊富な選択肢があります。本記事では木工着色塗料の種類とその活用シーンについて、木工塗料専門メーカーが詳しく解説します。

木工着色塗料を選ぶ際、「よく使う特定の製品しか知らない」という方や、「ケースに応じて使い分けが必要だとは感じているが、どんな基準で選べばいいか分からない」という方のために、本記事では木工着色塗料の種類とその活用シーンについて解説します。

公共施設や商業施設の建築設計などで、木工着色塗料を選定する立場にあるが、相談できる人が周りにいない、とお困りの方はぜひ参考にしていただければ幸いです。

木工塗装の役割と特徴

木工塗装には、意匠性、保護、機能性という3つの役割があります。

木工着色塗料を選定する上では、これらの役割を理解した上で、適切な塗料と組み合わせることが重要です。

この章では、木工塗装のそれぞれの役割を紹介します。

意匠性

木材の見た目を変化させ、色や艶を調整する役割があります。

適切な塗料を選ぶことで、要望に近い仕上がりを実現できます。

例えば、着色により安価な木材を高級木材風にしたり、グランドピアノや仏壇のような元の木材とは全く違う見た目にするなど、様々な仕上がりを選択することができます。

木工着色塗料は、この「意匠性」を付与することに重点を置いた塗料といえます。

保護

木材を傷や汚れ、カビなどから保護し、美観を維持する役割があります。

適切な塗料を選ぶことで、木材の寿命を延ばし、メンテナンスの負担を軽減できます。

例えば、屋外で使用する場合、無処理の木材は1年足らずで色が灰色になったり、カビが生えたりと大きく劣化することが多いですが、適切な保護塗装を行うことで数年にわたり美観を維持することができます。

木工着色塗料の中には、意匠性の付与だけでなく、木材を紫外線から保護する効果を持つものもあります。

機能性

木材に特定の機能を付与する役割があります。

適切な塗料を選ぶことで、木材の使用範囲を広げることができます。

例えば、滑り止め塗装を行うことで、足腰の力が弱い方でも安心して上り下りができる階段・手すりをつくることができます。

木工塗料の特徴

金属やプラスチック、コンクリートなどの塗料と比べて、木材の塗装は難しい、と感じる方が多いのではないでしょうか。

木工着色塗料を選定する上でも、木材の特徴を考慮に入れなければならないケースが存在します。

この章では、木材の特徴と、そこに紐づく塗料の特徴を紹介します。

木材の特徴

塗装を行う観点からは、木材は「不均一」な基材といえます。

木材と一口に言っても、種類や加工方法によって性質が異なるためです。

木材の種類によっては、ヤニが多く含まれていたり、紫外線で色が変わりやすいなどの性質を持つものがあります。

加工方法の種類によっては、塗料の吸い込みやすさにばらつきが大きく、色ムラが起こりやすいなどの性質を持つものがあります。

さらに言えば、同じ種類・同じ加工方法の木材でも、木材を切り出した場所や産地の違いによって性質が異なることもあります。

性質が異なる木材という基材を、ある程度均一な仕上がりや性能に整えることは、木工塗料の重要な役割です。

塗料の特徴

木材の柄(木目)を活かすために、木工塗料は透明なものが主流です。

さらに、水のように木材に浸透する「浸透型塗料」と呼ばれるタイプもよく採用されます。

木材を採用する案件では「素材に木材を使っている」ことがわかる仕上げを求められることが多いためです。

また、性能の観点から見ると、先述した木材の性質に合わせた製品が多いです。

例えばヤニを出にくくする塗料、紫外線による変色を目立ちにくくする塗料などです。

木工塗料を選定する上で、木材の性質まで考慮できると、提案の質を高めることができます。

木工着色塗料の種類と活用シーン

木工着色塗料は以下の3つの視点で分類できます。

①浸透型・造膜型・半造膜型

②木地着色・塗膜着色

③顔料系・染料系

この章では、それぞれの種類についてメリット・デメリットと活用シーンを紹介します。

浸透型・造膜型・半造膜型

木材に浸透するタイプか、ペンキのように表面に膜を造る(造膜)タイプか、という分類です。

・浸透型

木材に浸透して着色するタイプです。

メリット:木目を強調した仕上がりになる。

木材の表情を楽しむことができるので、木目を活かしたい新築の建物や、高級家具・建材の塗装は、ほとんどの場合浸透型が選定されます。

デメリット:下地を隠ぺいする力が低い。

木材の色よりも大幅に明るい色を塗装したり、下地の劣化・変色が大きい木材を塗り替えるような場合には、希望する仕上がりにならない場合もあります。

・造膜型

ペンキのように表面に膜を造り(造膜)着色するタイプです。

メリット:下地を隠ぺいする力が高い。

下地の色に左右されづらく、たいていの場合は希望の色に仕上げることができるため、下地の劣化・変色が大きい塗り替え案件での採用が多いです。

また、色がはっきりして均一な印象も与えられるため、北欧風のデザインに向いていると言えます。

デメリット:木目を塗りつぶしてしまう。

良くも悪くもペンキ調になってしまうため、木目を活かしたい案件には不向きです。

また、造膜型塗装の上から塗り替えを行う場合、劣化した塗膜を除去するのに大きな労力がかかるため、補修が容易にできないことにも注意が必要です。

屋外の塗装においては、仕上がり感だけでなく、木材の寿命にも大きくかかわってくるため、

「木材保護塗料」で用いられることが多いタイプでもあります。

【補足】木材保護塗料とは

ウッドデッキやベンチなど、屋外の木材を様々な劣化要因から保護する為の塗料。

紫外線カット、防カビ、防腐、防虫の4つの保護機能を持つ塗料が多い。

また、モルタルやサイディングボード、木部など様々なものに塗装できる所謂「汎用塗料」と比べると、木材の変形に追従する柔軟性や、木材の呼吸を妨げない通気性などの特性を有するものが多い。

・半造膜型

木材の表面に薄い膜を造り着色するタイプです。

ここ十数年で木材保護塗料市場に登場した、比較的新しい概念です。

メリット:木目をある程度残しつつ、下地を隠ぺいすることができる。

浸透型は下地の汚れなどが透けてしまいがち、かといって造膜型は隠ぺい力高い分、木目も塗りつぶしてしまう、と悩むことが多い初期~中期の塗り替えで多く採用されます。

デメリット:造膜型ほどの隠ぺい力は無い。

隠ぺい力が高いと言っても、造膜型ほどではないので、黒くなった下地を真っ白に着色するのは難しく、かといって色が着くまで塗りすぎると造膜型と同じような、木目が消えた仕上がりになってしまう点には注意が必要です。

木地着色・塗膜着色

木材自体に色を付けるタイプか、その上にかぶさる保護膜(塗膜)に色を付けるタイプか、という分類です。

主に木目を活かす仕上がりを行う際に用いられる概念です。

・木地着色

木材に直接着色を行う塗料です。

メリット:木目を強調した仕上がりになる。

高級感が求められる家具・建材の塗装はもちろん、後述の塗膜着色と比べて刷毛で塗装しても着色ムラが出にくいこともあり、現場塗装でもほとんどの場合こちらが選択されます。

デメリット:木材の色のバラツキもそのまま見えてしまう。

特に集成材の塗装では、木地着色単体では全体の色がバラついて、不揃いな仕上がりになることがあります。

その場合は、後述の塗膜着色と組み合わせてカバーすることがあります。

【補足】集成材とは

木材を集めて接着し、大きなサイズにした建材。

テーブルやカウンターなど、広い面積の板はこれが用いられることが多い。

近年、大型木造建築の骨組みなどで採用が増えている「CLT」も、集成材の一種。

・塗膜着色

木材に色が着いた膜をかぶせる塗料です。

半透明のカラーフィルムをかぶせたような仕上がりになります。

メリット:全体を均一な仕上がりにそろえられる。

集成材のほか、赤っぽい部分と白っぽい部分(赤太と白太)が混ざった木材などの場合、木地着色単体では不揃いな仕上がりになることがあります。

その場合、塗膜着色で全体に薄く色を重ねることにより、色差をやわらげることができます。

同じ品質の製品を大量生産する必要がある、建材や家具工場で主に用いられます。

デメリット:木目がぼやける。

塗膜着色単体では木目がぼやけた仕上がりになってしまうため、先述の木地着色と組み合わせることが多いです。

また、塗りムラが表れやすいので、スプレーガンなどの塗装器具を用いて、均一な塗装を行うことが推奨されます。

顔料系・染料系

色の粒子が混ざっているタイプか、色が溶けているタイプか、という分類です。

主に木目を活かす仕上がりを行う際に用いられる概念です。

・顔料系

色の粒子が混ざっている塗料です。

メリット:ムラになりにくく、退色しにくい。

木地着色に用いても、木地の吸い込みによる色ムラが少なく、にじみません。

また、光(紫外線)によってほぼ退色しないことから、屋外の塗装は顔料系が用いられることが多いです。

デメリット:色の透明性が低い。

染料系と比べると、やや木目がぼやけた仕上がりになります。

・染料系

色が溶けている塗料です。

メリット:色の透明性が高い。

顔料系と比べて、木目が鮮明な仕上がりを得られます。

先述した塗膜着色に用いることで、木目がぼやけにくくなります。

デメリット:ムラになりやすく、退色しやすい。

木地着色に用いると、木地の吸い込みによる色ムラが激しく、にじみが発生します。

また、光(紫外線)によって退色します。

椅子、テーブルなどの家具塗装の場合は、材色揃えや耐光性の配慮から木地着色は顔料、カラーイング(補色)は染料を使用するなど、組み合わせて用いられることがあります。

【補足】顔料系と染料系の中間塗料

最近は色の粒子のサイズが小さく、顔料系に関わらず透明度が高い「染料風の顔料系着色塗料」も上市されている。

これを用いることで、耐光性と木目の鮮明さを両立した仕上げが得やすくなる。

まとめ

本記事では木工着色塗料の種類とその活用シーンを解説しました。

木工着色塗料を選ぶ際には、その種類や活用シーンに応じた使い分けが重要です。

今回紹介した各塗料の役割や特徴を理解し、目的に合った塗料を選定することで、読者の皆様がより良い仕上がりを実現できることを願っています。

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この記事を書いた人:販売促進グループ 増田
画力と丁寧な記述に定評のあるライター。業務ではWEB販促を担当。最近は人生6度目のダイエットに挑戦中。