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WP(木材保護塗料塗り)徹底解説

ウッドデッキ、外壁、軒天など、屋外の木部を風雨や紫外線から守るために必須となるのがWP(木材保護塗料塗り)です。かつては内装・外装を問わず使用されるケースがありましたが、現在の公共建築工事標準仕様書において、その適用範囲は屋外専用へと明確に制限されています。
本コラムでは、WP仕様の特徴、規格(JASS 18 M-307)と市場ニーズのズレ、そして内装使用が制限された理由の考察と代替案について解説します。
目次
1. WP塗りの特徴と規格(JASS 18 M-307)
WPとは、JASS 18 M-307(木材保護塗料)規格に適合する塗料を用いた仕上げです。
木材の内部に薬剤(防腐・防カビ・防虫剤等)と着色顔料を浸透させ、木材を保護することを主目的とします。
規格と市場ニーズのギャップ
設計者が製品を選定する際、規格の内容と市場の実態にズレがあることを理解しておく必要があります。
JASS 18 M-307において規定されている品質基準は、主に耐候性(変色・劣化のなさ)とかび抵抗性です 。
しかし、実際の市場や設計現場では、シロアリやキクイムシへの対策として防虫性能や、木材腐朽菌を防ぐ防腐性能が実質的な必須要件として求められています。JASS規格上、これらは必須項目ではありませんが、大谷塗料を含む主要メーカーのWP製品は、市場要求に応えるために防虫・防腐薬剤を配合した設計が一般的となっています。
2. 公共建築工事標準仕様書では「屋外専用」
設計実務において最も注意が必要なのが、現在の標準仕様書ではWPは屋外専用であるという点です。
適用範囲の限定
現在の「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」において、第18章塗装工事の適用一覧表では、WPの適用範囲は外部のみとされています。
このため、屋内の木部に「WP」と特記することは、標準仕様書に基づく設計としては不適切となります。多くのメーカーカタログでも、WP製品には「屋外専用」の注意書きが記載されています。
3. 内装指定が不可な理由と「安全な代替提案」
なぜ、WPは屋内で使用できなくなったのでしょうか。その最大の理由は安全性(含有薬剤のリスク)にあると考えられます。
WPの内装使用リスク
一般的な屋外用WP塗料には、耐候性や防虫効果を高めるために強力な薬剤が含まれています。これらの中には、厚生労働省が定める「室内濃度指針値」の対象となる揮発性化学物質等が含まれるケースがあり、閉鎖された室内空間においてはシックハウス症候群や化学物質過敏症の引き金となる恐れがあるため、使用が制限されています。
代替案:水性バトンプラスによる安全性確保
「屋内だが、半屋外のように湿気が多く、カビや腐朽が心配」というケースでは、WPの保護性能を持ちながら、室内使用に配慮した安全性の高い塗料を選定する必要があります。
推奨代替品:大谷塗料 水性バトンプラス
- 高い安全性と法的根拠:
- F☆☆☆☆相当の試験データ: 本製品は屋外用分類のためF☆☆☆☆の「登録」はありませんが、第三者機関によるホルムアルデヒド放散量測定試験を実施済みです。その結果、F☆☆☆☆と同等の放散等級であることを証明する試験データを提出可能です。
- 食品衛生法適合: 乾燥した塗膜は、食品衛生法・食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)に適合しています。※万が一子供が口にしても有害物質が溶け出さない安全性が確認されており、保育園や学校の什器にも採用可能です。
- JASS 18 M-307 適合: 屋内使用可能な設計でありながら、WPとしての基本性能(耐候性・防腐等)もクリアしています。
※乾燥した塗面が「食品衛生法・食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)」 に 適合。食品用器具及び容器包装(直接食品と接触する箇所)へのご使用は上記規格基準適合のみでは出来ません。 詳しくはこちらのコラム「木製食器に使える塗料ってありますか?」をご参照ください。
4. 浸透・半造膜・造膜および油性・水性の使い分け
一口にWP(および木材保護塗料)と言っても、その性状によって適材適所が異なります。
造膜性の違い
- 浸透型:
木材の内部に塗料を浸透させ、表面に塗膜を作らないタイプです。木の調湿作用(呼吸)を妨げないため、内部の水分蒸発による「膨れ・剥がれ」が起きにくく、塗り替えメンテナンスが容易です。木目がはっきりした仕上がりを得やすいこともあり、WPの中で最もメジャーなタイプです。
- 半造膜型:
木材に浸透しつつ、表面にごく薄い膜を形成するタイプです。浸透型よりも着色顔料が表面に留まりやすいため、傷んだ下地を隠ぺいしやすく、塗り替えに向いています。耐候性も高い傾向があるので、外壁や軒天など、メンテナンスサイクルを延ばしたい面に推奨されます。
- 造膜型:
木材表面にしっかりとした塗膜を作るタイプです。高い隠ぺい性と耐候性を持つものが多いですが、通気性のない製品を使うと木材内部の水分によって「膨れ・剥がれ」のリスクが高まります。屋外で使用する場合は、通気性を確保した「呼吸する造膜塗料」を選定することが重要です。
油性と水性の違い
- 油性(溶剤系):
浸透性が高く、木材への馴染みが良いのが特徴です。
- 水性:
低臭・速乾で環境への負荷が少ないのが特徴です。近年の技術進歩により、油性に劣らない耐候性を持つ製品が登場しています。
5. 大谷塗料 WP製品 選定一覧表
公共建築の各部位・用途に合わせた、大谷塗料のWP製品ラインナップです。
| 製品名 | ベース | タイプ | 規格適合 | 特徴・推奨部位 |
| 水性バトンプラス | 水性 | 浸透型 | JASS 18 M-307 食品衛生法適合 学校環境衛生基準適合 | 【屋外全般】 植物油が原料の自然系塗料。 WP規格を満たしながら(条件によっては)屋内でも使える最高クラスの安全性。学校、保育園、デッキ、内装木部全般に。 |
| VATONプラス | 油性 | 浸透型 | JASS 18 M-307 食品衛生法適合 | 【屋外全般】 植物油が原料の自然系塗料。 塗り伸びがよく色むらになりにくいため、大面積の塗装でも美しい仕上がりが得やすいです。 大阪・関西万博の大屋根リングにも使用されました。 |
| ソワードステイン | 水性 | 半造膜型 | JASS 18 M-307 | 【屋外全般】 無機・有機ハイブリッド樹脂による高耐候性。色あせしやすい外壁や破風、ウッドデッキなどで、メンテナンス周期を延ばしたい場合に。 |
※上記製品は屋外用塗料分類のため、F☆☆☆☆登録はありません(対象外)。
公共建築における信頼の証:VATONプラスと関西万博
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のシンボルであった大屋根リングには、大谷塗料のVATONプラスが採用されました。 過酷な屋外環境下での木材保護性能と、大規模公共プロジェクトに求められる厳しい品質基準をクリアした信頼の実績が、皆様の設計実務をサポートします。
▶2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)大屋根リング事例
▶VATONプラスの詳細はこちら
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この記事を書いた人:販売促進グループ 増田
画力と丁寧な記述に定評のあるライター。業務ではWEB販促を担当。最近は約8年ぶりに名刺に載せる似顔絵を描き直した中で、己の加齢にショックを受けた。