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公共塗装仕様における改修の要:RA種・RB種の違いと「素地ごしらえ」の重要性を徹底解説~木部塗装改修を成功させる下地調整の技術的根拠と製品選定~

2026年現在、建築業界では新築からストック活用(改修・維持管理)へのシフトが一段と加速しています。公共建築物においても、既存の木質資材をいかに長く、美しく使い続けるかが設計担当者の手腕となってきました。

こうした改修現場で必ず参照されるのが公共建築改修標準仕様書(以下、改修標準仕様書)です。新築時の「A種・B種」という区分に対し、改修工事ではRA種RB種という独自の区分が登場します。本コラムでは、塗装の仕上がりと耐久性の7割を決定づけると言われる素地ごしらえおよび下地調整に焦点を当て、RA種RB種の具体的な違いを技術的視点で解説します。


素地ごしらえと下地調整:その定義と重要性

塗装工程に入る前の準備段階には、大きく分けて素地ごしらえ下地調整という2つの言葉が使われます。これらは混同されがちですが、実務上は明確な役割の違いがあります。

1. 素地ごしらえの役割(新築時)

木部における素地ごしらえとは、木材そのものの状態を整える作業です。汚れや付着物の除去、ヤニ抜き、そしてサンディングによる平滑化が含まれます。木材は不均一な素材であるため、この段階で吸い込みを均一に整えなければ、後の工程でどれほど高価な塗料を使っても色ムラや早期剥離の原因となります。

2. 下地調整の役割(改修時)

改修工事特有の工程が下地調整です。これは、既存の古い塗膜が残っている場合に、その塗膜をどの程度まで処理するかを指します。既存塗膜と新しく塗る塗料の相性(付着性)を確保するための、極めて重要な判断ポイントです。


公共塗装仕様におけるRA種とRB種の構造的な違い

改修標準仕様書(第7章 塗装工事)において、木部塗装の改修は、既存塗膜の劣化状況や求められる仕上がり品質に応じて、主にRA種RB種に区分されます。

RA種・RB種の比較表(標準的な考え方)

仕様区分主な特徴と目的既存塗膜の処理(下地調整)推奨される部位
RA種全面剥離・高級改修既存塗膜を全面的に除去し、新築に近い状態に戻す。意匠性が重視されるエントランス、重要室の木部。
RB種塗り重ね・標準改修活膜(しっかり付着している膜)を残し、目荒らし等の処理をして塗り重ねる。天井、高所梁など、意匠性よりも保護継続を重視する部位。

1. RA種(全面剥離仕様)のメリットと実務

RA種は、剥離剤や機械的な研磨によって古い塗膜を一度すべて取り去ります。

  • 技術的利点:新しい塗料が直接木材に浸透・付着するため、塗膜の浮きや剥がれのリスクが最も低くなります。
  • 意匠性:色味を完全に変えたい場合や、木目を鮮明に蘇らせたい場合にはRA種が必須となります。

2. RB種(塗り重ね仕様)のメリットと実務

RB種は、既存塗膜の劣化が少なく、付着力が維持されている場合に採用されます。

  • 技術的利点:工程が少なく工期短縮が可能です。
  • 実務の注意点:既存塗膜が「何系(ウレタン、ラッカー等)」であるかを正確に把握し、新しい塗膜との密着が問題ないか確認することが必要不可欠です。

改修現場で活きる大谷塗料の製品ソリューション

公共塗装仕様に基づいた改修設計において、大谷塗料では下地の状態に応じた最適な製品ラインナップを提供しています。

1. RA種(全面剥離)後の着色仕上げ(屋内):VATON-FX

既存塗膜を完全に除去した後の素地に対しては、VATON-FXによる浸透着色が最適です。 天然植物油を主成分としているため、木材の呼吸を妨げず、しなやかな仕上がりを実現します。 改修時に懸念される古い木材特有の吸い込みムラに対しても、高いレベリング性を発揮します。

2. RB種(塗り重ね)やシミが目立つ改修(屋外):ソワードステイン

改修工事では、素地ごしらえで落としきれない深いシミや日焼けによる色ムラが問題となります。ソワードステインは半造膜型で隠蔽性が高いため、既存塗膜の上からの塗り重ねや、シミを隠して美観を回復させたい現場で非常に有効です。 改修標準仕様書のRB種の考え方に合致し、少ない工程で高い意匠回復を可能にします。


実務担当者が押さえるべき設計判断のチェックポイント

改修工事の特記仕様書を作成する際、RA種RB種のどちらを選ぶべきか迷った際は、以下の3点を確認してください。

  1. 既存塗膜の付着力
    ガムテープ等で簡単に剥がれるような劣化状態であれば、RB種(塗り重ね)は不可。必ずRA種で全面剥離が必要です。
  2. 色の変更幅
    VATON-FXなど浸透型着色で濃い色から明るい色へ変更したい場合は、既存の色を隠せないためRA種を選択します。
  3. 環境配慮と臭気
    特に学校や病院の改修では、剥離剤の使用が制限される場合があります。その際は、水性VATON-FXを用いた低臭気仕様の検討が有効です。

まとめ:素地ごしらえを侮らない設計を

公共塗装仕様におけるRA種RB種の選定は、単なる工数の違いではなく、その建物の「次なる寿命」を決定づける作業です。

  • 素地ごしらえおよび下地調整を仕様書に明文化し、施工会社へ徹底させること。
  • それぞれの下地状態に適した塗料(VATON-FXソワードステイン等)を特記指定すること。

これらにより、竣工時の美しさだけでなく、10年後、20年後の公共財産を守ることが可能になります。


公共建築における信頼の証:VATONプラスと関西万博

2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のシンボルであった大屋根リングには、大谷塗料のVATONプラスが採用されました。 過酷な屋外環境下での木材保護性能と、大規模公共プロジェクトに求められる厳しい品質基準をクリアした信頼の実績が、皆様の設計実務をサポートします。

具体的な製品選定や、公共建築工事標準仕様書に基づく特記の作成に関するご相談、JASS適合証明書の発行依頼などは、お問い合わせフォームより承っております。

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この記事を書いた人:販売促進グループ 増田
画力と丁寧な記述に定評のあるライター。業務ではWEB販促を担当。最近は約8年ぶりに名刺に載せる似顔絵を描き直した中で、己の加齢にショックを受けた。