事例・コラム

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前回のコラムで解説したCL(クリヤーラッカー塗り)が「速乾性と意匠性」の仕様であるのに対し、UC(ウレタン樹脂ワニス塗り)は「強靭さと耐久性」を最大の武器とする仕様です。

公共建築物の屋内において、床、階段、カウンターといった摩耗が激しい部位には必須となるUC仕様ですが、その運用にはJASS規格と標準仕様書の間に存在する「定義のズレ」や、製品選定上の注意点が存在します。本コラムでは、実務で迷いやすい1液・2液の使い分けや、規格適合に関する技術的側面を徹底解説します。


1. UC塗りの特徴と主な活用部位

UCは、ポリウレタン樹脂を主成分とした透明塗料(ワニス)仕上げです。CLに比べて塗膜が厚く、乾燥後は強靭な被膜を形成するため、以下の性能に優れる傾向があります。

  • 耐摩耗性: 歩行や物の移動による摩擦に強い。
  • 耐薬品性: 洗剤やアルコール消毒に対する耐性が高い。
  • 肉持ち感: 厚みのある塗膜により、高級感のある光沢(または落ち着いた艶消し)仕上げが可能。

活用すべき推奨部位

  • 屋内床(フローリング): 体育館、廊下、ステージなど。※体育館や教室床など、特に高い耐摩耗性が求められる箇所については、標準的なUC塗りとは異なる仕様が組まれる場合もあります。
  • カウンター・天板: 飲食スペース、受付カウンターなどの天板。
  • 手すり・建具: 人の手が頻繁に触れ、皮脂汚れや摩耗が懸念される部位。

2. JASS規格における「透明性」と「屋外耐候性」の注意点

設計図書において「JASS 18 M-301(1液ウレタン)」や「JASS 18 M-502(2液ウレタン)」への適合を特記する場合、以下の2点についてメーカー側の見解を理解しておく必要があります。

① 艶消し仕上げにおける「透明性」の基準

JASSの規格試験には、塗料の「透明性」を問う項目があります。

しかし、近年の設計トレンドである「半艶消し」や「全艶消し」の塗料は、光沢を抑えるために微細な「艶消し剤」を配合しています。この成分の特性上、塗料の液自体は白濁する傾向にあります。

そのため、厳密な規格試験においてはJASSが定める完全な透明性の基準を満たさない(白濁と判定される)場合がありますが、これは意匠(マット仕上げ)を実現するための仕様上の特性であり、性能欠陥ではありません。

② 「屋外曝露耐候性」と使用場所の矛盾

JASS 18 M-502等の材料規格には、試験項目として「屋外曝露耐候性」が定められています。

しかし、公共建築工事標準仕様書において、UC塗りはあくまで「屋内の」塗装仕様と定義されています

このため、大谷塗料のUC該当製品(セーフティーワルツ インテリアクラフト上塗り等)は、公共建築工事標準仕様書の定義に従い、屋内専用塗料として設計しています。

「JASS規格に耐候性項目があるから」といって、UC仕様を屋外(WPの適用部位)に使用することはできません。屋外で使用すると、塗膜の割れや剥がれが早期に発生するため、必ず「屋内」に限定してご採用ください。


3. 1液型と2液型の違い

UC仕様には、硬化剤を混ぜない「1液型」と、主剤・硬化剤を混合する「2液型」があります。それぞれの特性を理解し、適材適所で選定することが重要です。

項目1液型ウレタン塗料2液型ウレタン塗料
メリット硬化剤との混合の手間がなく、手間・材料ロスが少ない。比較的乾燥時間が短い。
デメリット乾燥時間が長い。主剤と硬化剤を計量混合して使用する手間がある。

※塗膜強度や推奨塗装部位については、1液・2液の違いではなく各製品特性によって異なります。詳しくは後述の製品一覧表をご参照ください。


4. 近年の仕様改定による「着色工程」の記載変更

前回のST(ピグメントステイン)解説でも触れましたが、最新の標準仕様書では、UC塗りの着色工程における記述が簡略化されています。

着色を行う場合の標準仕様として表記されている「目止め着色」工程は、塗布作業および拭き取り作業を考えると管理が難しく意匠ムラや密着不良のリスクがあるため、弊社では推奨しておりません。

推奨される「OSUC」仕様

実務においては、標準仕様書の記述を読み替え、以下のOSUC(オイルステイン+ウレタン)仕様を特記することを推奨します。

  1. 素地着色: 浸透型着色剤(ST)を塗布し、拭き取りを行って着色する。
  2. 上塗り: その上からUC(クリヤー)を塗り重ねて塗膜を形成する。

この工法により、木目を活かした美しい着色と、強靭な塗膜保護を両立させることが可能です。


5. 環境配慮に対応する「水性UC」仕様

環境対応(低VOC・低臭)が求められる現場では、溶剤型ウレタンに代わり、水性ウレタンの採用が進んでいます。

水性VATON-FXによるUC仕様

  • 水性VATON-FX トップクリヤー:

弊社の標準的な水性1液型ウレタンです。壁面や手すり等のUC仕様に適合します。

  • 水性VATON-FX フロアーNY:

床専用に開発された水性1液型ウレタンです。水性1液型でありながら、強靭な塗膜性能を持ち、JASS 18 M-301(1液型)同等以上の性能を備えています。

  • ソワード2液トップクリヤーまたはソワード2液フロアーT:

高い保護性能を持つ水性2液型ウレタンです。耐摩耗性、耐薬品性に優れ、テーブル天板などの保護に最適です。体育館などの床にはフロアー専用の「ソワード2液フロアーT」を推奨します。


【一覧表】大谷塗料ウレタン塗料の適材適所

大谷塗料では、JASS に適合する標準製品から、さらに特殊な性能を付加した高機能製品まで幅広くラインナップしています。

現場のニーズに合わせて最適な製品を選べるよう、性能と用途を整理した比較表を作成しました。

製品名区分JASS主な用途特徴・選定ポイント
VATON-FXトップクリヤー
VATON-FXフラット
弱溶剤 1液型JASS18M301適合
※「トップクリヤー」のみ適合。先述の「塗料の白濁」の規定があるためです。
壁面 建具 造作【標準仕様】 最も汎用的な仕様です。癖のない作業性・仕上がり感を持ちます。
VATON-FXフロアー弱溶剤 1液型JASS18M301適合一般床 階段【床用標準】 トップクリヤーよりも塗膜の肉持ち感が良く、歩行に適した滑りにくさと耐摩耗性を備えています。住宅などの一般床に最適です。
ネオデラック1000A弱溶剤 1液型JASS18M301適合体育館 教室床 講堂【高耐久・体育館】 耐摩耗性が高く、激しい運動が行われる体育館床の定番製品です。
SWネオデラック2020FF強溶剤 1液型該当規格無し (JASS18M301相当品)体育館 教室床 講堂 カウンター テーブル【高耐久・体育館・耐薬品】 湿気硬化型ウレタンによる強靭な塗膜が特徴です。耐摩耗性が高く、激しい運動が行われる体育館床の定番製品です。 耐薬品性・耐汚染性も高く、除菌や洗剤拭きが必要な箇所にも選定されます。
SWインテリアクラフト上塗り強溶剤 2液型JASS18M502適合
※「ハイクリヤー」のみ適合。先述の「塗料の白濁」の規定があるためです。
壁面 建具 造作【速乾・作業性】 2液型のため乾燥が早く、工期短縮に貢献します。1:1のシンプルな比率の配合の為、比較的容易に配合作業を行うことができます。
水性VATON-FXトップクリヤー水系 1液型該当規格なし(JASS18M301相当品)壁面 建具 造作【低臭・環境配慮】 JASS 18で新設された「水系UC」に対応。溶剤臭がないため、運営中の施設改修や臭気に敏感なエリアでの施工に最適です。
水性VATON-FXフロアーNY水系 1液型該当規格なし(JASS18M301相当品)一般床 階段【低臭・環境配慮・床用標準】 塗膜が黄変しにくい(NY:Non-Yellow)設計です。ヒノキやメープルなど、白木の風合いを活かしたい床仕上げに適しています。
ソワード2液トップクリヤー
ソワード2液フロアーT
水系 2液型該当規格なし(JASS18M502相当品)体育館 教室床 講堂 カウンター テーブル【高耐久・体育館・耐薬品】 「トップクリヤー」は耐薬品性・耐汚染性も高く、除菌や洗剤拭きが必要な箇所にも選定されます。 「フロアー」は耐摩耗性が高く、激しい運動が行われる体育館床の定番製品です。

※「SW」・・・セーフティワルツの略です。

※乾燥した塗面が「食品衛生法・食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)」 に 適合。食品用器具及び容器包装(直接食品と接触する箇所)へのご使用は上記規格基準適合のみでは出来ません。 詳しくはこちらのコラム「木製食器に使える塗料ってありますか?」をご参照ください。


まとめ:適材適所のUC選定で、長く使える公共空間を

UC(ウレタンワニス塗り)は、公共建築の内装において最も過酷な環境に耐える「盾」となる仕様です。

JASS規格と標準仕様書の定義の差異を理解し、床には高耐久な塗料、造作には作業性の良い塗料といった使い分けを行うことで、美観と機能性が長く続く空間を実現してください。

大谷塗料では、用途に応じた最適なウレタン塗料のラインナップと、OSUC仕様を実現する着色剤を取り揃え、皆様の設計実務をサポートいたします。発行依頼などは、お問い合わせフォームより承っております。


公共建築における信頼の証:VATONプラスと関西万博

2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のシンボルであった大屋根リングには、大谷塗料のVATONプラスが採用されました。 過酷な屋外環境下での木材保護性能と、大規模公共プロジェクトに求められる厳しい品質基準をクリアした信頼の実績が、皆様の設計実務をサポートします。

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この記事を書いた人:販売促進グループ 増田
画力と丁寧な記述に定評のあるライター。業務ではWEB販促を担当。最近は約8年ぶりに名刺に載せる似顔絵を描き直した中で、己の加齢にショックを受けた。