事例・コラム
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現代において、公共建築物における木材利用の促進は、脱炭素社会の実現に向けたウッドチェンジの推進などにより、建築設計の最前線で極めて重要な位置付けとなっています。設計事務所や大手ゼネコンの担当者が木部塗装の仕様を策定する際、最も重要な法的・技術的根拠となるのが公共建築工事標準仕様書(以下、標準仕様書)です。
その中でも「A種・B種」の区分を正確に把握することは、意図した品質を確保する上で必須の知識といえます。本コラムでは、公共建築における木部塗装の代表的な仕様について最新の仕様書工程表を引用しながら、実務において特に注意すべき違いを技術的根拠に基づいて解説します。
目次
1. クリヤラッカー塗り(CL):
クリヤラッカー塗り(CL)は、内装木部の美観と保護を目的とした代表的な仕様ですが、A種とB種ではその工程構成に大きな差があります。

『公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版』第18章5節「クリヤラッカー塗り」 より引用
A種(全8工程)の特徴
A種は比較的手厚い工程となっています。
- 目止めと着色の包含:工程1に「目止め」、工程2に「着色」が組み込まれています。(実際に着色を行うかどうかは特記によります)
- 研磨と上塗りの繰り返し:工程6と工程8で上塗りを2回行い、その間(工程7)にも研磨を挟むことで、より肉持ち感のある平滑な仕上がりを実現します。
B種(全4工程)の特徴
対してB種は、工程3(下塗り)から工程6(上塗り1回目)までのわずか4工程で完了する簡易仕様です。目止め、着色、中塗り、2回目の上塗りおよびそれに付随する研磨工程が含まれないため、コストや工期を抑えることは可能ですが、仕上がりの質感はA種に比べて簡素になります。
公共物件の内部造作に相応しい重厚な質感を得たいのであれば、セーフティーワルツ ラッカー型クリヤー金剛をA種の仕様で適用することをお勧めします。
2. ウレタン樹脂ワニス塗り(UC):
ウレタン樹脂ワニス塗り(UC)は、強靭な塗膜を形成するため、屋内木部の中でも床、階段、カウンターの天板など、物理的な負荷がかかる部位に最適です。

『公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版』第18章10節「ウレタン樹脂ワニス塗り」 より引用
種別の考え方
CLと同様にA種とB種の区分が存在します。
こちらは着色工程がA種にもB種にも含まれているため、違いは中塗り(+研磨)の有無のみです。
実務上の推奨
階段の手すりや床板など、頻繁に手が触れ、摩耗が予想される部位には、耐久性と美観の観点からA種を指定することが推奨されます。ただし、必ずしもA種でなければならないわけではなく、部位の重要度や予算に応じてB種を選択することもあります。
長期的な品質保持を優先するならば、VATON-FXフロアーを用いたA種仕上げが、将来の不具合リスクを低減する合理的な選択となります。
3. ピグメントステイン塗り(ST):
浸透型の着色仕上げであるピグメントステイン塗り(ST)については、A種・B種の区分けが存在しません。

『公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版』第18章11節「ピグメントステイン塗り」 より引用
標準工程
仕様書上は「ピグメントステイン塗り」の2回塗りが基本工程となっています。
拭き取り工程の削除
令和4年度版以降、標準工程から「拭き取り」の文言が削除されました。しかし、弊社のVATON-FXのようなピグメントステインを用いてムラなく美しく仕上げるためには、現在でも技術的に「拭き取り」を行うことが推奨されます。設計担当者は、必要に応じて特記で拭き取りの実施を指示することが望ましいといえます。
4. 木材保護塗料塗り(WP):
屋外木部の保護を目的とするWP(木材保護塗料塗り)においても、種別の選択は耐候性を大きく左右します。

『公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版』第18章12節「木材保護塗料塗り」 より引用
WPにおける回数の違い
最新の標準仕様書に基づくと、A種とB種の違いは「上塗りの回数」です。
- A種:工程1(下塗り)に加え、工程2・3で上塗りを2回、計3回塗りを行います。
- B種:工程1(下塗り)と工程2(上塗り1回目)の計2回塗りで完了します。
屋外の過酷な環境下では、塗り回数が直接的に保護性能へ影響します。万博リングでも採用されたVATONプラスのような、JASS 18 M-307適合品を指定する際は、特に維持管理が困難な高所や重要部位にはA種(3回塗り)の検討が有効です。また、WPは薬剤成分を含んでいる「屋外専用」の仕様であり、F☆☆☆☆証明書の提出も不可であるため、屋内木部への適用は避けるのが大原則です。
まとめ:正確なスペックインが建物の資産価値を守る
公共建築工事標準仕様書におけるA種・B種の選択、および各仕様の特徴を整理したまとめ表です。
| 仕様略号 | A種・B種の有無 | 特徴と注意点 |
| CL | あり | A種は目止め・着色を含む8工程(着色は特記がある場合のみ)。 B種は4工程の簡易仕様。 |
| UC | あり | 床などの摩耗が激しい部位にはA種が推奨。 |
| ST | なし | 2回塗りが基本。仕上がり品質向上のため拭き取りを推奨。 |
| WP | あり | 屋外専用。A種は計3回塗り、B種は計2回塗り。 |
公共建築における信頼の証:VATONプラスと関西万博
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のシンボルであった大屋根リングには、大谷塗料のVATONプラスが採用されました。 過酷な屋外環境下での木材保護性能と、大規模公共プロジェクトに求められる厳しい品質基準をクリアした信頼の実績が、皆様の設計実務をサポートします。
具体的な製品選定や、公共建築工事標準仕様書に基づく特記の作成に関するご相談、JASS適合証明書の発行依頼などは、お問い合わせフォームより承っております。
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この記事を書いた人:販売促進グループ 増田
画力と丁寧な記述に定評のあるライター。業務ではWEB販促を担当。最近は約8年ぶりに名刺に載せる似顔絵を描き直した中で、己の加齢にショックを受けた。