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JASS 18 M-307(木材保護塗料)規格~公共建築のWP仕様を支える品質基準と試験内容~

屋外のウッドデッキやルーバー、外壁などの木部塗装において、標準的な仕様として採用される「WP(木材保護塗料塗り)」。
このWP仕様の品質を裏付けているのが、日本建築学会が定める材料規格「JASS 18 M-307 木材保護塗料」です。
カタログ等で「JASS 18 M-307 適合品」という表記をよく目にしますが、具体的にどのような試験をクリアした塗料なのか、その詳細を把握している設計者は意外と少ないのではないでしょうか。
本コラムでは、規格書の詳細内容を紐解き、公共建築の屋外木部塗装に求められる厳格な性能基準について解説します。
目次
1. JASS 18 M-307 規格が定める「品質」とは
JASS 18 M-307では、木材保護塗料として認められるための品質基準を明確に定めています。 規格書によると、主な品質項目は以下の通りです。
・容器の中での状態 かき混ぜたとき、堅い塊がなくて一様になること。
・塗装作業性 塗装作業に支障があってはならないこと。
・乾燥時間 16時間以内であること。
・塗膜の外観 塗膜の外観が正常であること。
・促進耐候性 480時間の照射試験で、ふくれ、割れ、はがれがなく、色の変化の程度が見本品に比べて大きくないこと。
・かび抵抗性 試験体の接種した部分に菌糸の発育が認められないこと。
このように、単に色がつくかどうかだけでなく、屋外での使用に耐えうる「耐候性」と、木材の敵であるカビを防ぐ「抵抗性」が数値や状態として厳格に定義されています。
2. 屋外木部塗装に求められる2つの核心的性能
JASS 18 M-307の中でも、特に重視すべきは「促進耐候性」と「かび抵抗性」の試験内容です。これらは、過酷な日本の屋外環境で木材を維持するために不可欠な要素です。
① 480時間の促進耐候性試験
屋外で使用される木材保護塗料にとって、紫外線や雨による劣化への耐性は最重要項目です。 規格では、スギの柾目板(150×70×10mm)を試験片として使用し、促進耐候性試験機(キセノンランプ法など)を用いて480時間の照射を行います。
この試験後、目視において「ふくれ」「割れ」「はがれ」が一切発生していないことが求められます。また、変色についても、基準となる見本品と比較して変化が大きくないことが合格の条件となります。
② 過酷な前処理を行う「かび抵抗性」試験
木材保護塗料における「防カビ性能」は、単に薬剤が入っていれば良いわけではありません。雨で薬剤が流出してしまっては意味がないからです。
JASS 18 M-307の試験(JIS Z 2911準拠+独自規定)では、菌を植え付ける前に以下の過酷な「溶出操作」を行います。
- 水浸漬:23℃の水に試験片を18時間浸す。
- 熱乾燥:取り出した後、80〜85℃の乾燥器に2時間入れる。
この「水攻め」と「熱攻め」の後に、クラドスポリウム(クロカビの一種)などの指定されたカビの胞子をまき、14日間培養します。 判定基準は非常に厳しく、接種した部分に「菌糸の発育が認められないこと」が合格条件です。つまり、雨に打たれ、日光で熱せられた後でも、防カビ効果が持続していなければJASS適合品とは名乗れません。
3. 設計者が確認すべき適合製品の判別方法
公共建築の設計図書において「WP」を指定する際、設計者は選定した塗料がこのJASS 18 M-307に適合しているかを確認する必要があります。
カタログおよび証明書の確認
塗料メーカーのカタログには、適用規格として「JASS 18 M-307 適合」や「JASS 18 M-307 規格適合品」といった記載があります。
また、監理段階においては、メーカーが発行する「JASS 18 M-307 適合証明書」や「試験成績書」を提出させることで、上記で解説した耐候性や乾燥時間、かび抵抗性の基準をクリアしていることをエビデンスとして残すことが可能です。
「防腐・防虫」性能についての補足
JASS 18 M-307の規格本文における品質規定は、上記でお伝えした通り「耐候性」と「かび抵抗性(防カビ)」が主軸です。 一般的に市場で販売されている「木材保護塗料(WP)」は、これに加えて「防腐(腐れ防止)」や「防虫(シロアリ・キクイムシ防止)」の性能を付加している製品が大半ですが、JASS規格そのものの定義としては、まず「耐候性」と「かび抵抗性」がベースラインにあることを理解しておくと、製品比較の解像度が上がります。
まとめ:規格の中身を知ることが、適切な品質管理への第一歩
JASS 18 M-307は、単なる記号ではなく、480時間の紫外線照射や、水没・加熱処理を経ても性能を維持できるタフな塗料であることを証明する規格です。
「WPなら何でも良い」ではなく、この厳しい試験をクリアした適合品を選定することが、公共建築の木部を長く美しく守るための必須条件となります。
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この記事を書いた人:販売促進グループ 増田
画力と丁寧な記述に定評のあるライター。業務ではWEB販促を担当。最近は約8年ぶりに名刺に載せる似顔絵を描き直した中で、己の加齢にショックを受けた。