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試験データの読み方:塗膜の硬度、耐薬品性、密着性能~「数値が高い=良い」とは限らない? 木部塗装における適正品質の見極め方~

公共建築、特に学校の教室床や体育館、老健施設のテーブルなどは、住宅とは比較にならないほどの過酷な使用環境に晒されます。
そのため、設計段階で提出される「物性表(試験データ)」の確認は、後のメンテナンスリスクを減らすために非常に重要です。
しかし、金属用塗料と異なり、木部用塗料においては「硬ければ良い」「強ければ良い」という単純な図式は成り立ちません。
本コラムでは、カタログや技術資料によく記載されている【鉛筆硬度】【耐薬品性】【密着性】の3つの試験データの読み方と、木材特有の評価基準について解説します。
目次
1. 塗膜の硬度(鉛筆硬度試験 JIS K 5600-5-4)
最もポピュラーな指標が「鉛筆硬度」です。これは、特定の硬さの鉛筆(6B〜9H)を45度の角度で塗膜に押し付け、傷がつかない(破れない)最大の硬度を表します。
「硬い塗膜」の落とし穴
世間一般的なイメージでは、FよりH、Hより2Hというように硬い数値が良いとされがちですが、木部塗装においては注意が必要です。
・木材は変形する
金属やコンクリートと違い、木材(特にスギやヒノキなどの針葉樹)は柔らかく、衝撃で凹みます。
もし、下地の木材よりも塗膜があまりに硬すぎると、物が落ちた衝撃で木が凹んだ際に、硬い塗膜が追従できずに「割れ(クラック)」が生じます。割れた箇所から水が入り込めば、そこから剥離や変色が始まります。
・適正な硬度の目安
弊社の代表的な体育館フロア向け塗料の鉛筆硬度は以下の通りです。
傷つきにくさと割れにくさのバランスを考えて設定しています。
セーフティワルツ ネオデラック1000A:HB
ソワード2液フロアーT:HB
セーフティワルツ ネオデラック2020FF:B
※いずれも塗膜単体の試験数値です。
2. 耐薬品性(耐液体性 JIS K 5600-6-1)
学校の給食室やランチルーム、病院の家具などでは、水以外の液体に対する耐性が必須となります。
試験は、塗板に各種薬品(酸、アルカリ、アルコール、醤油、洗剤など)を滴下し、一定時間(24時間など)放置した後に拭き取り、塗膜の膨れや変色、艶引けがないかを目視で確認します。
公共建築で重視すべき項目
現代の公共施設で特に確認すべきは、以下の2点です。
・耐アルコール性
コロナ禍以降、施設内の消毒頻度が激増しました。一般的なラッカー塗料や一部の水性塗料はアルコールに弱く、白化(白く濁る)したり、ベタついたりすることがあります。テーブルトップや手すりには、耐アルコール試験をクリアしたウレタン系塗料(例:セーフティーワルツウレタン、水性VATON-FXフロアーNY)の選定が不可欠です。
・耐汚染性(生活汚れ)
マジックインキ、カレー、コーヒーなどの生活汚れに対する耐性です。特に浸透型塗料(ST)の場合、造膜型に比べて汚れが残りやすいため、汚れ防止が必要な部位には「OSUC」仕様でオーバーコートする仕様が推奨されます。
3. 密着性能(碁盤目テープ試験 JIS K 5600-5-6)
どんなに硬く、薬品に強い塗膜でも、素地(木材)から剥がれてしまっては意味がありません。その付着力を測るのが「碁盤目テープ試験」です。
試験の内容
カッターナイフで塗膜に1mm間隔または2mm間隔で縦横に切り込みを入れ、碁盤の目のような格子(100マス)を作ります。その上にセロハンテープを強く圧着して剥がし、何マス残ったかを評価します。
データの読み方(旧JISとISO基準)
カタログにはよく【100/100】と記載されています。これは「100マス中、100マス残った(一つも剥がれなかった)」ことを意味し、合格ラインの基準となります。
もし【50/100】などの数値であれば、密着不良を起こしており、実現場では早期にボロボロと剥がれる可能性が高い危険な状態です。
・木材特有の難しさ
木材は油分(ヤニ)を含んでいたり、吸い込みムラがあったりと、密着を阻害する要因が多い素材です。
特に、油分の多い樹種(チーク、ローズウッド等)や、含水率の高い木材に塗装する場合は、標準的な試験データだけでなく、事前の試し塗りによる密着確認を行うことが、トラブル回避の鉄則です。
まとめ:データは「バランス」を見るためのもの
試験データを見る際は、一つの数値だけを追い求めるのではなく、用途に合わせたバランスが取れているかを確認することが重要です。
・床材なら:硬すぎず(追従性)、かつ傷に強いバランス
・テーブルなら:耐アルコール性と耐汚染性
・全般:100/100の完全な密着性
大谷塗料では、製品ごとの物性データを整備し、用途に応じた最適な塗料選定をサポートしています。
公共建築における信頼の証:VATONプラスと関西万博
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この記事を書いた人:販売促進グループ 増田
画力と丁寧な記述に定評のあるライター。業務ではWEB販促を担当。最近は約8年ぶりに名刺に載せる似顔絵を描き直した中で、己の加齢にショックを受けた。