事例・コラム
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OSCL・OSUC徹底解説

公共建築の設計図書や特記仕様書において、木部着色仕上げの代名詞として使われる「OSCL」(オイルステインクリヤーラッカー塗り)や「OSUC」(オイルステインウレタンクリヤー塗り)。
これらは建築業界で定着した通称であり、素材の美しさを活かしつつ、現場での施工品質を安定させるための非常に合理的な塗装システムです。
しかし、これらの仕様は非公式なものであり、公共建築工事標準仕様書には収載されていません。
なぜ、わざわざ非公式な仕様で特記を組む必要があるのでしょうか。
その理由は、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)に記載されている標準的な「CL」「UC」の着色工程をそのまま施工しようとすると、大規模な建築現場では作業性や品質確保の面で大きなリスクを伴うためです。本コラムでは、標準仕様の問題点と、それを解決するためのOSCL・OSUCの技術論を解説します。
目次
1. 標準仕様「CL」の着色工程(目止め着色)における作業的課題
公共建築工事標準仕様書において、CLを着色仕上げとする場合、工程内に「目止め着色」という記述が登場します。特に問題となるのが、この「目止め着色」の作業性です。
標準的な目止め着色とは、との粉(砥の粉)などの充填剤に着色顔料を混ぜた、いわば「泥」のような粘度のある材料を木材に塗り込み、導管(木の孔)を埋めながら着色する工法です。
この工法は、家具などの小面積であれば平滑で美しい仕上がりになりますが、建築現場の大面積(壁面や天井)で行うには以下の致命的なリスクがあります。
・拭き取りムラの発生
粘度のある材料を広範囲に均一に拭き取ることは極めて困難であり、拭き残しや色ムラが顕著に出やすくなります。
・密着不良のリスク
導管以外に余分な目止め剤が残ってしまうと、その上に塗る塗料が木材に直接食いつかず、層間剥離の原因となります。
また、厳密に標準仕様書を読み解くと「目止め」の後に「着色」を行う工程順になっていますが、これでは着色剤の吸い込みムラが激しくなります。仮に標準仕様書通りに工程を組む場合でも、実務上は弊社のCL仕様書のように「目止め剤に着色剤を混ぜて同時に行う」等の調整が必要不可欠です。
2. 標準仕様「UC」の着色工程におけるリスク
UC(ウレタン樹脂ワニス塗り)の着色においては、使用する着色剤のタイプによって、上塗り時に深刻なトラブルが発生しやすいためこちらも注意が必要です。
油性顔料着色剤を使用する場合
油性顔料着色剤の上にウレタン塗料を塗り重ねると、以下の不具合が懸念されます。
・乾燥遅延
油性顔料着色剤の乾燥が不十分な状態で重ね塗りしてしまうと、中膿のような状態になり、通常より大幅に乾燥が遅れるリスクがあります。
・色ズレ(戻り)
ウレタン塗料の溶剤によって着色層が再溶解して動き、色が滲んだり戻ったりするリスクがあります。
溶剤形顔料着色剤を使用する場合
速乾性の溶剤ステインを使用する場合、乾燥が早すぎるために、大面積をハケで塗り広げる際に「継ぎ目」のムラ(塗り継ぎムラ)が発生しやすくなります。また、こちらも同様に、上塗りのウレタンを塗布した際に着色剤が再溶解し、色ズレを起こすリスクがあります。
これらのリスクを回避するために、実務では「OSUC」(専用の着色剤+吸い込み止め+ウレタン)というシステムを組むことが一般的です。
3. 油性仕様における「VATON-FXシーラー」の役割と注意点
油性(溶剤型)のOSCL・OSUC仕様を採用する場合、着色剤として大谷塗料の「VATON-FX」が広く採用されています。この際、上塗りとの間に挟む「つなぎ材」として重要なのが「VATON-FX シーラー」です。
メリット:色ズレ防止と乾燥促進
このシーラーは、着色層(VATON-FX)を素早く固定(フィックス)する役割を持ちます。
・色ズレの防止
着色顔料を固めることで、上塗り塗料(ラッカーやウレタン)の溶剤による色の動きや滲みを防ぎます。
・乾燥促進
VATON-FXシーラーにはVATON-FXの乾燥を促進する効果があるため、中膿み状態になるリスクを下げつつ、塗装の短工期化に貢献します。
デメリット:床面には不向き
一方で、VATON-FXシーラーはラッカー塗膜に性質が近い「硬くて薄い塗膜」を形成する設計になっています。塗膜全体で見ると柔軟性に欠け、比較的脆い性質があります。
そのため、土足歩行や椅子の引きずりなど強い負荷がかかる「床面(フローリング)」には適しません。床面に使用すると、衝撃で塗膜が割れたり、剥離したりする原因となるため、壁・天井・造作材への使用に限定してください。
4. 環境対応型の「水性OSCL・OSUC」仕様
近年の公共建築では、環境配慮(低臭・低VOC)の観点から水性化が求められます。
水性OSCL相当仕様(壁・天井用)
- 着色:水性VATON-FX
- 下塗り:水性VATON-FX サンディングシーラーNY
- 上塗り:水性VATON-FX トップクリヤー
水性OSUC相当仕様(床用)
床面においては、VATON-FXシーラーのような脆い下塗りを使わず、床専用の強靭なウレタンで仕上げます。
- 着色:水性VATON-FX
- 上塗り(2~3回塗り):水性VATON-FX フロアーNY
※水性VATON-FXはVATON-FXのような重ね塗り時の色ズレのリスクが少なく、元々が速乾であるため、VATON-FXシーラーに該当する代替製品はありません。
※床用仕様のウレタン塗装回数は3回が推奨です。
まとめ:現場の失敗を防ぐための特記指定
標準仕様書にある「目止め着色」や単純な「着色」の記述は、小規模な家具塗装の理屈に基づいており、現代の大規模建築現場にはそぐわない側面があります。
設計者の皆様におかれましては、現場での色ムラや乾燥トラブルを未然に防ぐため、特記仕様書にて「OSCL」や「OSUC」といったシステム塗装を明記し、適切な下塗り材(シーラー等)の有無まで指定することをお勧めします。
公共建築における信頼の証:VATONプラスと関西万博
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のシンボルであった大屋根リングには、大谷塗料のVATONプラスが採用されました。 過酷な屋外環境下での木材保護性能と、大規模公共プロジェクトに求められる厳しい品質基準をクリアした信頼の実績が、皆様の設計実務をサポートします。
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この記事を書いた人:販売促進グループ 増田
画力と丁寧な記述に定評のあるライター。業務ではWEB販促を担当。最近は約8年ぶりに名刺に載せる似顔絵を描き直した中で、己の加齢にショックを受けた。