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公共建築における「JIS適合」の定義と、これからのラッカー塗料選定

公共建築の設計図書において、使用する塗料の品質を担保するために欠かせない規格の一つが「JIS(日本産業規格)」です。特に内装木部の代表的な仕様であるCL(クリヤーラッカー塗り)においては、「JIS K 5531」や「JIS K 5533」への「適合」が、長年にわたり採用の必須条件とされてきました。

しかし、塗料業界の変遷とともに、このJISマークを取り巻く環境は大きく変化しています。本コラムでは、そもそもJIS規格への適合が何を意味するのか、なぜそれが公共建築において重視されるのかという基礎知識から、目前に迫った「唯一のJIS適合ラッカー塗料の認証終了」という実務的な課題への対応について解説します。


1. 木部塗装におけるJIS規格と「適合」のハードル

JIS(Japanese Industrial Standards)は、産業標準化法に基づき制定される日本の国家規格です。公共建築においてJIS適合品が求められる理由は、メーカーごとの品質のばらつきを抑え、一定水準以上の性能を客観的に保証するためです。

製品にJISマークを表示(適合)するためには?

カタログや製品ラベルにJISマークを表示することは、メーカーが自由にできることではありません。製品が規格に「適合」していると公言するためには、国が登録した第三者機関(登録認証機関)による、極めて厳格な審査をクリアする必要があります。

・工場審査(品質管理体制の審査)

製品を作る工場が、品質を維持するための設備、技術、検査体制、社内規格などを備えているか、審査員が現地で詳細なチェックを行います。単に良い製品が作れるだけでなく、同じ品質のものを安定して作り続けられる仕組み(体制)があるかが問われます。

・製品試験

実際に製造された製品が、JIS規格で定められた性能基準(乾燥時間、塗膜硬度、耐水性など)を満たしているかを試験します。

・定期的な維持審査

一度認証を取得した後も、3年ごとの定期審査(維持審査)を受け続け、体制に不備がないか監視され続けます。

なぜ「信頼の証」なのか

このように、JISマークが表示されている製品は、メーカーの自己宣言ではなく、第三者が継続的に監視・保証している製品であることを意味します。

この厳格なプロセスこそが、公共建築という高い品質と説明責任が求められる現場において、JIS適合品が採用され続ける理由です。

CL仕様を支える2つの規格

木部塗装(CL仕様)においては、以下の2つの規格が製品品質を定義しています。

・JIS K 5533(木材用クリヤラッカー)

主に下塗り(シーラー)や中塗り(サンディング)に適用される規格です。木材への浸透性、研磨作業性(サンディングのしやすさ)、乾燥時間などが厳格に定められています。

・JIS K 5531(ニトロセルロースラッカー)

主に上塗り(トップクリヤー)に適用される規格です。仕上がりの光沢、塗膜の硬度、耐水性などが規定されており、最終的な美観と保護性能を担保します。


2. 現時点での適合製品:ラッカー金剛シリーズ

現在、大谷塗料では公共建築のCL仕様に適合する製品として、以下の「セーフティーワルツ金剛シリーズ」を展開しており、上記の厳格なJIS規格認証を取得しています。

JIS適合の木部用ラッカー塗料は、2026年1月現在、この製品しか存在しません。

【JIS K 5533 適合品(下塗り・中塗り)】

セーフティーワルツ ウッドシーラー金剛

セーフティーワルツ ラッカー型サンディング金剛

【JIS K 5531 適合品(上塗り)】

セーフティーワルツ ラッカー型クリヤー金剛

これらは、速乾性と肉持ち感(塗膜の厚み感)に優れ、学校や庁舎の内装造作において数多くの採用実績を持っています。


3. 2026年3月、JIS規格認証からの卒業

設計者の皆様に共有すべき重要な決定事項があります。大谷塗料は、2026年3月14日の有効期限をもって、上記の金剛シリーズにおけるJIS規格認証の更新を行わないことを決定いたしました。

認証終了の背景と理由

最大の理由は、ラッカー塗料市場の縮小です。環境配慮による水性化シフトが進む中、溶剤型ラッカーのJIS認証(工場審査や維持審査を含む莫大なコスト)を維持することが、事業戦略上で大きな負担となっていたことが背景にあります。

これは製品そのものの廃番や品質低下を意味するものではありません。あくまで「JISマークの表示」を終了するという経営判断です。

2026年4月以降の品質保証体制

JIS認証終了後も、セーフティーワルツ金剛シリーズは「JIS規格『相当品』」として、製造・販売を継続します。

製品の組成や性能に変更はなく、日本塗料工業会の「F☆☆☆☆登録製品」としての管理は継続されます。

これまでJIS認証工場として培った技術と厳格な社内品質管理体制はそのまま維持されますので、2026年以降も変わらず安心してご採用いただけます。


4. 今後の設計図書・特記における記載方法

2026年以降、市場から「JISマーク付きの木部用ラッカー」が姿を消すことが予想されます。そのため、設計図書においては「JIS適合品(マーク表示品)」という限定的な指定ではなく、実質的な品質を確保するための以下の記述を推奨します。

【推奨される特記記載例】

「使用材料は、JIS K 5531(または5533)同等以上の品質(適合性)を有する F☆☆☆☆登録製品(例:大谷塗料 セーフティーワルツ金剛 相当品)とする。」

このように「規格への適合性」や「同等品」であることを要件とすれば、JIS認証マークの有無に関わらず、標準仕様書が求める品質を満たした製品をスムーズに選定することが可能です。


まとめ:規格の形が変わっても、品質への責任は変わらない

JISマークは、厳しい審査をクリアした製品にのみ許される信頼の証ですが、認証制度そのものが時代の変化とともにあり方を変えつつあります。

大谷塗料では、2026年のJIS認証終了後も、JIS規格が求めてきた厳しい品質基準への「適合」を自社規格として遵守し、公共建築に相応しい塗料を提供し続けます。「OSCL」や「OSUC」といったシステム塗装を明記し、適切な下塗り材(シーラー等)の有無まで指定することをお勧めします。


公共建築における信頼の証:VATONプラスと関西万博

2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のシンボルであった大屋根リングには、大谷塗料のVATONプラスが採用されました。 過酷な屋外環境下での木材保護性能と、大規模公共プロジェクトに求められる厳しい品質基準をクリアした信頼の実績が、皆様の設計実務をサポートします。

▶2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)大屋根リング事例
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この記事を書いた人:販売促進グループ 増田
画力と丁寧な記述に定評のあるライター。業務ではWEB販促を担当。最近は約8年ぶりに名刺に載せる似顔絵を描き直した中で、己の加齢にショックを受けた。