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木工着色塗料の選び方 その④~研磨番手や塗布量による色の見え方の違い~
木工着色塗料(以下、着色剤と記載)を使用した時に、完成した塗装品を見て「思っていたイメージと違った」という経験はありませんか?
前回のコラムでは、光源や面積、角度などでの色の見え方の違いについて解説しました。今回は研磨や塗装による色の見え方の違いについて、写真や図を交えて解説します。
※ 本記事に掲載する写真は、撮影したカメラによる補正がかかっております。あくまで参考程度にお考えください。
目次
木地研磨による違い
塗装前に木材を研磨することを「木地研磨」といいます。木工塗装において木地研磨は、塗装の仕上がりの80%を左右すると言われるほど、重要な工程です。
最も大きな理由は、木材が不均一な天然素材だからです。木材は生き物ですので、鉄やコンクリートなどの人工物と比べると、不均一な表面状態をしています。また、湿気でケバがたつなど、環境の変化によっても、表面の状態が大きく変化します。もし木地研磨をしないで塗装すると、色むらになったり、ざらざらした表面に仕上がってしまうなど、塗装不良を発生させる可能性が非常に高くなります。
木地研磨を行うことで、塗料の吸い込みが均一になり、ムラの少ない、手触りの良い仕上がりが得られます。表面の汚れやケバを除去する効果もあるため、塗料の密着不良など、塗装トラブルのリスクも減らすことができます。
研磨番手の粗さによる違い
研磨に使用する研磨紙(サンドペーパー)には番号がついています。これを「研磨番手(以下、番手と記載)」といいます。番手は研磨の粗さを示す数値で、少ない程、研磨した時に表面が粗くなります。(例:#80の方が、#400よりも粗い研磨になる)
表面が粗くなると、着色剤を塗装した時、塗料の吸い込みが増えて、色づきが濃くなります。その逆に、細かい番手で研磨すると、色づきは薄くなります。
ほとんどの場合、塗料のカタログや塗装仕様書に標準の研磨番手が記載されていますので、そちらを確認して作業を行うことを推奨しています。
研磨する方向による違い
木工塗装における研磨は、木目に沿って行うのが基本です。何故なら、木目に沿わずに研磨を行うと、木材の繊維を破断してしまうため、塗装した後に研磨の跡が目立ってしまうからです。例えば木目に直角に研磨すると、以下の写真のような仕上がりになります。
塗装による違い
同じ塗料を使って塗装しても、塗装の行い方の違いによって、仕上がりが異なる場合があります。
塗料の撹拌による違い
着色剤は基本的に、使用する前に容器をよく振って撹拌する必要があります。なぜなら、色の成分が容器の底に沈降していることが多いためです。撹拌せずに着色剤の上澄みを使用した場合、色づきが薄くなります。逆に、底に沈降した部分を使用した場合は、色づきが濃くなります。
また、着色剤の種類にもよりますが、容器を振るだけでは色の成分が十分に混ざらないこともあります。その場合、撹拌機の使用や、混ぜ棒などで容器の底面までかき混ぜることを推奨しています。
塗布量による違い
基材に塗りつける塗料の量のことを、塗布量といいます。一般的に使われる単位は、「●kg/㎡」で、これは、「1㎡あたりに塗料を●kg塗装する」ことを表しています。塗布量が多いほど、着色剤の色づきは濃くなります。
例①:塗布量0.03㎏(30g)/㎡で1回塗りするよりも、0.06kg(60g)/㎡で1回塗りした方が、色が濃く仕上がる
例②:塗布量0.03㎏(30g)/㎡で1回塗りするよりも、0.03kg(30g)/㎡で2回塗りした方が、色が濃く仕上がる
希釈割合による違い
着色剤に対して添加する希釈剤(シンナーや水)の割合が多いほど、色づきは薄くなります。弊社塗料のVATONFXなど、ステイン塗りに使用する着色剤は、原液で使用するものがほとんどですが、色の濃度調整のために透明色の同塗料を添加する場合があります。(シンナーや水で希釈すると、色むらになったり、塗料の性能が発揮されない恐れがあるためです)こちらも同様に透明の量が多ければ多いほど色づきは薄くなります。
※ 塗料ごとに希釈剤の種類も変わりますので、どの希釈剤を使用するかは塗料のカタログや塗装仕様書をご参照ください。
塗装方法による違い
同じ刷毛塗りでも、塗料を拭きとるか拭き取らないかで仕上がりは変わります。塗料をウエスなどで拭きとることで、木目のコントラストを強調する事ができます。※塗料を拭きとったウエスは取扱いに注意してください。
塗装に使用する機器としては、刷毛、ローラー、エアスプレーガンなどがあります。一般的には、刷毛やローラーに比べてスプレーで塗装する方が塗装ムラ、色ムラが発生しづらいです。
塗料による違い
「濡れ色」による違い
塗料を塗ると木材の見え方が変わります。その中でも「濡れ色」とは、水等の液体に濡れた、つややかな色のことを指します。
濡れ色は、塗料が乾燥していない時ほど、濃く現れます。そのため、着色剤を塗装した直後と乾燥した後でも、見え方が変わります。
また、着色剤を塗装した後、塗膜を形成する塗料を塗装した時も見え方は変わります。こちらは乾燥した状態でも濡れ色が残ります。
光沢による違い
光沢(艶)のあるなしでも見え方は変わり、艶が消えている方が、色が濃く見えます。
製品による違い
また、塗膜を形成する塗料は、液体の状態で既に色が付いているものもあり、塗料自体の色が仕上がりに影響することがあります。
以上のことを踏まえて、透明色の塗料だけで塗装する場合でも、無塗装の木材や色見本帳だけで仕上がりの打ち合わせをしないように注意してください。
まとめ
着色剤は研磨番手や塗布量により色づきが変わります。そのため、カタログ、塗装仕様書、塗装工程表に沿って作業を進めることが重要です。これは本番の塗装に限らず、見本の作製や調色を行う際も同様です。今回紹介したポイントを理解し、目的に合った塗料を選定することで、読者の皆様がより良い仕上がりを実現できることを願っています。
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この記事を書いた人:販売促進グループ 増田
画力と丁寧な記述に定評のあるライター。業務ではWEB販促を担当。最近は人生6度目のダイエットに挑戦中。