事例・コラム

Column

CL(クリヤーラッカー塗り)徹底解説

公共建築物の内装木部塗装において、長年にわたり標準的な仕様として採用されてきたのがCL(クリヤーラッカー塗り)です 。しかし、令和8年(2026年)に向けて、この仕様を取り巻く環境、特に製品の規格に関する状況が大きく変化しようとしています 。

本コラムでは、公共建築塗装におけるCL仕様の有効性と減少の背景を振り返りつつ、設計実務者が直面するJIS規格適合品不在という新たな課題への対応策について、メーカーの内部事情も交えて透明性高く解説します 。


1. CL(クリヤーラッカー塗り)の有効性と仕様の変遷

CLは、ニトロセルロースを主成分とするラッカーを用いた透明仕上げです。その最大の特徴は、他の塗料を圧倒する速乾性にあります。

なぜラッカーが選ばれ続けるのか:圧倒的な速乾性のメリット

ラッカーは溶剤の揮発によって硬化するため、ウレタンやオイルに比べて乾燥が極めて速いのが特徴です。

  • 工期短縮: 指触乾燥まで数分から数十分と短いため、1日のうちに下塗り・研磨・上塗りを塗り重ねる工程を完結させることが可能です。
  • 冬場の施工性: 気温が低い冬場の現場でも乾燥遅延が起きにくく、工期通りの進行を助けます。
  • 仕上がりの美しさ: 乾燥中に空気中のホコリが付着するリスクが低く、平滑で美しい塗膜が得やすい特徴があります。昔は高級家具に多用されていたように、ラッカーに使用される樹脂(ニトロセルロース)と木材の相性の良さが仕上がりの美しさに寄与している側面もあり、意匠性が求められる造作家具や枠周りに最適です。

仕様減少の背景:耐久性重視のウレタン化と環境配慮の水性化

かつては内装全般に採用されていたCLですが、近年の標準仕様書改定においてその採用範囲は限定的となっています。これには「物理的性能」と「環境性能」の二つの側面からのシフトが影響しています。

ウレタン樹脂ワニス(UC)への移り変わり

かつての仕様では、内装の造作材や家具に幅広くラッカーが指定されていました。しかし、土足歩行や激しい使用にさらされる床、カウンターなどの部位において、CLは塗膜の薄さと硬さゆえに耐摩耗性や耐薬品性が不足していました。 そのため、より強靭な塗膜を形成するUC(ウレタン樹脂ワニス塗り:JASS 18 M-301等)へと主役が移り変わりました

環境意識による水性化シフト

さらに近年では、公共建築全体で有機溶剤(シンナー)を排除する水性化の流れが加速しています。

  • VOCと臭気対策: ラッカーは特有の強い臭気と揮発性有機化合物(VOC)を放散するため、シックハウス対策や、学校・病院など稼働中の施設での改修工事において敬遠されるようになりました 。
  • 環境貢献: 弊社が過去に実施したアンケート結果でも、設計者の約半数が水性化による環境負荷低減データに高い関心を示しており、設計段階から水性仕様(WPや水性UC等)を優先する傾向が強まっています 。

それでも残るCLの適材適所

水性化の波はあるものの、現在でも以下の部位においてはCLが最適解として残り続けています。

  • 天井・高所壁面: 人の手が触れず、臭気の影響が比較的残りにくい部位 。
  • 短工期が求められる造作枠: 水性塗料では乾燥待ち時間が取れないような突貫工事。

ウレタンに比べて塗膜が薄く、木の質感を残しやすい点や、補修(リコート)が容易である点からも、意匠性とコストバランス(速乾性)を重視する現場では、依然として重要な選択肢です。


2. 2026年問題:JIS K 5531・JIS K 5533規格の認証終了

設計者の皆様に必ず知っておいていただきたいのが、CL仕様の根拠となるJIS規格の現状です。標準仕様書では、CLに使用する材料として以下が規定されています。

  • JIS K 5533: 木材用クリヤラッカー(下塗り用シーラー等)
  • JIS K 5531: ニトロセルロースラッカー(上塗り用)

市場縮小とJIS認証の維持困難な現実

実は、ラッカー塗料市場の縮小に伴い、これらのJIS規格認証を維持することが塗料メーカーにとって大きな負担となっています 。 実際に、大谷塗料では長年セーフティーワルツ金剛シリーズでJIS認証を取得してきましたが、2026年3月14日をもって、JIS K 5533およびJIS K 5531の認証更新を行わないことを決定いたしました 。

これは品質を下げるという意味ではありません 。JIS認証維持にかかる負担を見直し、事業戦略を再構築するための判断です 。

JIS適合品が市場から消える日

重要なのは、これが一社だけの問題ではないことです。 現在、他の主要塗料メーカーにおいても、これらの規格についてJISマーク表示許可を維持している製品は確認できず、多くがJIS『相当品』(規格適合品)への切り替えを完了しています。したがって、大谷塗料の認証終了をもって、JIS K 5531およびJIS K 5533に適合する木部用ラッカー塗料は、事実上市場から消滅します

このため、設計図書にJIS K 5531 適合品(JISマーク表示品)と厳格に指定してしまうと、施工段階で該当製品が存在しないという調達不能の事態に陥ることになります。


3. 性能同等品を採用すべき合理的理由

JISマーク製品が入手不可能となるこれからの時代、設計実務ではどのようにスペック(仕様)を組むべきでしょうか。答えは、規格適合品から性能同等品への意識転換です。

品質は変わらずF☆☆☆☆で管理

JISの認証更新を終了した後も、製品そのものの組成や品質が変わるわけではありません 。大谷塗料のセーフティーワルツ金剛シリーズは、JIS認証で培った技術を維持したまま、日本塗料工業会のF☆☆☆☆登録製品として継続販売されます 。

JISマーク品と同等の性能を持つ塗料を採用することで、従来のCL仕様が持つ速乾性や美観といったメリットを損なうことなく、公共建築の品質を維持できます。


4. 水性化というもう一つの選択肢

もし、JIS規格の問題を回避しつつ、さらに前述した環境対応意識に応えたい場合は、あえて溶剤ラッカー(CL)にこだわらず、水性仕様へ切り替えるのも有効な手立てです。


まとめ:制度の変更に動じない実務対応を

公共建築塗装におけるCL仕様は、2026年を境にJISマークありきでの選定から、メーカーの実績と品質保証に基づいた選定へとフェーズが移行します。

JIS規格から外れることは、決して品質の低下を意味しません 。大谷塗料では、長年の公共建築での採用実績を持つセーフティーワルツ金剛シリーズの品質を今後も厳格に管理し、皆様の設計実務をサポートし続けます

公共建築における信頼の証:VATONプラスと関西万博 2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のシンボルであった大屋根リングには、大谷塗料のVATONプラスが採用されました。 過酷な屋外環境下での木材保護性能と、大規模公共プロジェクトに求められる厳しい品質基準をクリアした信頼の実績が、皆様の設計実務をサポートします。

具体的な製品選定や、公共建築工事標準仕様書に基づく特記の作成に関するご相談、JASS適合証明書の発行依頼などは、お問い合わせフォームより承っております。


公共建築における信頼の証:VATONプラスと関西万博

2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のシンボルであった大屋根リングには、大谷塗料のVATONプラスが採用されました。 過酷な屋外環境下での木材保護性能と、大規模公共プロジェクトに求められる厳しい品質基準をクリアした信頼の実績が、皆様の設計実務をサポートします。

▶2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)大屋根リング事例
▶VATONプラスの詳細はこちら

具体的な製品選定や、公共建築工事標準仕様書に基づく特記の作成に関するご相談、JASS適合証明書の発行依頼などは、お問い合わせフォームより承っております。

また、コラムなどの更新情報やお得な情報をお届けするメールマガジンもございます。ぜひご登録をご検討ください。


この記事を書いた人:販売促進グループ 増田
画力と丁寧な記述に定評のあるライター。業務ではWEB販促を担当。最近は約8年ぶりに名刺に載せる似顔絵を描き直した中で、己の加齢にショックを受けた。